「天狗飛脚」のストーリー

江戸の飛脚問屋の老舗天狗屋も近頃は新進亀屋のために大量の飛脚を引き抜かれ今は辰、六助、太平のわずか三人が残り、それがそろって鈍足ときては店はさびれる一方で、主人佐吾兵衛と娘おしゅんは頭を悩ましていた。ある日、この三人組が町の居酒屋で長太という快足を持つ男を発見した。彼は一回だけの約束で大阪まで手紙を持って走ったが、日限の四日より早く届けて、その快足ぶりは大江戸の大評判となった。こうして二度三度乞われるままの飛脚家業に生甲斐を感じる様になり、おしゅんが彼に好意を寄せる様になり、ますます快調だった。しかし意外な災難が彼にふりかかった。当時江戸の巷を魔の如く跳りようする怪盗がき代の俊足を持つ故にあらぬ嫌疑が長太にかかったのだ。新参の目明し源七は、彼を犯人として連行しようとしたが、長太は必ず怪盗を発見して身の潔白を立てると叫んで逃走した。佐吾兵衛たちは長太を信じたが、長太のいない天狗屋は再びちょう落の一途をたどった。おしゅんは遂に大阪に縁談を求めて江戸を発った。そうしたころ、町の子供たちの間に奇怪な熱病が蔓延し、蘭医仁斎は最後の手段として大阪にある名薬を求めたいと希望し、豪商大黒屋より三千両借りて、飛脚を天狗屋に頼む。辰が江戸を走り出た。この噂を聞いた亀屋は直ちに薬と大金を狙って偉駄天八五郎を飛ばした。そして、更にそれを追って意外にも源七が続いた。彼は怪盗捕縛のためと称したが、実はこの怪賊こそ源七で、金で目明しに化けていた不逞の凶悪であったのだ。その頃源七の正体をつかんだ長太が、三者を追って宙を飛んだ。自分の汚名を辱ぐべく必死の追跡だ。途中源七のあくどい妨害を排し、遂に大阪寸前、源七を取って押さえ、同時におしゅんにも追い付いて、二人は固く結ばれたのである。