「日本製少年」のストーリー

かつて父親をゴルフクラブで殴り殺そうとした過去を持つ田中大和は、巨大遊園地で掃除夫のアルバイトをしていたが今は職を失い、浦安の粗末なアパートの一室に暮らしている。実りのないアルバイト探しを続ける大和は、ある日池袋の駅前でティッシュ配りをしている少女・薫と出会った。大和は強引に薫に近付いていき、二人はお互いの心の中にある孤独と絶望を感じ取る。ティッシュ配りの仕事をしたいと思った大和は薫の事務所へ赴き、そこが売春とトルエンの売買を本業としていることを知った。事務所にいたエリは拳銃まで持っており、いたずらに薫に手渡したりする。薫は心臓の病気で胸にペースメーカーを埋め込んだ体で、そのペースメーカーの電池が間もなく切れるという。事務所で大和と体を重ねようとしても薫はペースメーカーのおかげでドキドキしない、と言った。事務所の社長・松浦は、ヤクザまがいの気配を漂わせながらも、その事務所の少女たちを奇妙な家族的雰囲気でまとめており、大和もそのファミリーの一員となってトルエン売買を任されることになる。大和と薫の仲はより近付いていき、薫は未だ持っていた拳銃を大和に手渡し、自分を殺したら(ペースメーカーがあるから)燃えないゴミに捨ててくれと言った。どこか危険に思われた大和は、それでも地道にトルエン売買の仕事をこなしていたが、ある時その現場を三人組の不良少年に襲われ、弾みで一人を撃ち殺してしまう。大和は一旦事務所に戻るが、そのまま薫と逃走することになった。行くあてもなく放浪する二人は、ふと大和の実家のマンションを訪ねるが、大和の動揺をよそに家は留守。二人が大和のアパートに戻ると、そこに松浦が来ていた。松浦は事件のため事務所が打撃を受けたことを述べ、大和たちに一緒に来ることを説く。大和と薫は松浦を撃ってそこから逃げ出した。浜辺へ辿り着いた二人は、チクシテツヤは俺たちのことを何と言うだろうと話しながらこれでやり直せると感じ合っていた。薫は、これからのことを考えたらドキドキしたと嬉しそうに言ったが、その直後に砂の上に倒れてしまう。大和は薫の死体からペースメーカーを取り出し、薫を生ゴミのカゴに捨てた。そして大和は、巨大遊園地を背に夜の闇へと去っていく。