「プロヴァンスの恋」のストーリー
1832年7月。エクス・アン・プロヴァンス。ピエモンテ王国騎兵隊の若き大佐アンジェロ(オリヴィエ・マルティネス)は、溝区解放とイタリア統一を目指すカルナボリ党員としてオーストリアと戦い、弾圧を逃れてフランスに亡命、この町に身を潜めていた。だが、幼なじみのマッジョリーナ(クラウディオ・アメンドラ)の裏切りで、オーストリア秘密警察の執拗な追跡を受ける彼は、馬を駆って仲間が大勢いるマノスクへと向かう。行く先々で彼の試練の旅は続く。恐ろしい伝染病コレラが蔓延する村では、患者の治療にあたっていた医者(フランソワ・クリュゼ)も感染し、彼の前で息絶えた。マノスクに着くと、よそ者のアンジェロは「泉に毒を入れた」と追い回され、警察に連行されるが、署長(ジェラール・ドパルデュー)は我が身の安全のために遁走。ある建物の屋根の上に隠れたアンジェロは、夜になって建物の中に降りると、謎めいた美しい貴婦人ポーリーヌ(ジュリエット・ビノシュ)と出会う。彼女は侵入者に恐れるでもなく、お茶とパンをふるまった。住民の一斉退去で町を出たアンジェロは、先に脱出していた仲間のジュゼッペと再会。コレラのため海路まで封鎖され、彼は祖国に軍資金を送れずにいた。アンジェロはその金を預かり、馬でイタリアに戻ることにする。川沿いに進むとマッジョリーナに出くわすが、コレラに倒れた彼は、裏切りを詫びて息を引き取った。ポーリーヌと再会したアンジェロは、マノスクの恩返しとして、一緒に馬で検問を突破し、ギャップの近くのテウスまで行くという彼女に同行を申し出た。高原で妖しい薬売り(ジャン・ヤンヌ)に道を訊ね、モンジェイ市が近いと聞くとポーリーヌはそこへ立ち寄り、ペロル市長(ピエール・アルディティ)を訊ねる。彼女は実はテウス伯爵夫人で、旅行中に夫と離れ離れになっていたことを知って動揺したアンジェロだが、それでも彼女を守り通すと決意。だが、彼女はアンジェロの制止を振り切って、夫を探しにマノスクへ戻ろうとする。案の定、たちまち彼女は騎兵隊に捕まり、城砦の隔離所に収容された。彼女を追って、アンジェロは自らそこへ入る。弱気になっていた彼女は彼の勇気と励ましに心を動かされ、協力して脱出に成功。テウス伯爵の領地に入ってから嵐に遭い、二人は人気のない屋敷に避難した。ポーリーヌはドレスを見つけて盛装し、最後の夜を惜しむように酒に酔い、夫との結婚のいきさつを語る。彼女はわずか16歳で40歳も年上のテウス伯爵(ポール・フリーマン)に見初められたのだ。挑発され、感情を抑えられなくなったアンジェロは、思わず彼女の手に口づけるが、それ以上は許されないことだった。別れを告げる彼に背を向けて、寝室へ向かおうとしたポーリーヌが突然コレラに倒れた。アンジェロは医者に教わった方法で、ひと晩中マッサージを続ける。彼女は一命を取り留め、アンジェロは夫の元に彼女を送り届けて、静かに立ち去る。だが、ポーリーヌはその後、片時も彼を忘れず、手紙を書き続けた。が、返事は長い間来なかった。彼女が半ば諦めかけた頃、アンジェロからの返事が届いた。伯爵は妻の心についた消しがたい炎を知ったが、いつか彼女がアンジェロの元へと去るときは、快く送り出すだろう。