「アンナ まなざしの向こうに」のストーリー

1960年代初めのドイツ郊外。少女・アンナ(アリス・ディーケリング)は、11歳。母親のソフィー(レネ・ソーテンダイク)と幼い弟のローリー(ステファン・デルグリュン)と小さな田舎町に住み、父親が家にいないことを除けば、親子3人明るく毎日を過ごしている。父親であるはずのフリッツ(フィリップ・ペータース)の記憶は、アンナにはない。ソフィーから聞かされる父の話は、戦争に行って戦死したことと、近所の工場を経営している短気なフランツ(ゲッツ・シューベルト)の弟であったということだけだ。父親がいないことにアンナ自身は不満はなかったが、気がかりなのは愛する夫を失ってから、仕事もせずに酒に溺れる母ソフィーのことだ。当然のごとく生活は苦しく、家賃は滞納し、アンナが中学に進学する資金にも困っていた。アンナもソフィーも何とか今の生活から抜け出したかったが、父親のいない家庭に社会は冷たい。そんな時、ソフィーはアンナにフィリッツが実はまだ生きていて、フランスのどこかで暮していることを告白する。「死んだはずのパパが生きている!」。いつか父親に会えることを夢見て、アンナたち一家は前向きになった。ソフィーもアルコール中毒での入院から回復し、家族が幸せになりかけたある日、一通の手紙がソフィーの元に届いた。手紙はフリッツからのものだった。そこには、ソフィーとアンナのもとに帰る気持ちがないことが書かれていた…。絶望から酒を浴びるように飲み、命を絶ったソフィー。ローリーとはなればなれに暮らすことになり、アンナはフランツに保護される。そしてある日、アンナは父親に会いに行くため、ひとり国境を越える……。