「くたばれ!ハリウッド」のストーリー

1956年、ビヴァリー・ヒルズのホテル。兄と共同経営していたアパレル会社が成功を収め、若くして巨万の富を築いていたロバート・エヴァンズは、プールサイドでかつての大女優ノーマ・シアラーに見いだされる。エヴァンズのハンサムぶりに目をとめたシアラーは、映画「千の顔を持つ男」に彼を起用。憧れのジェームズ・キャグニーとの共演を果たしたエヴァンズは、たちまちのうちにスターの階段を駆け上る。しかし、彼が目指すのは、俳優ではなく、映画のすべてを掌握できるプロデューサーであった。34歳の時、ニューヨーク・ポストに掲載された記事をきっかけに、彼はパラマウント映画の若き幹部に抜擢された。時代は古き良きハリウッドが終焉を迎え、新しい時代の行き先も定まらぬ混乱期。役者あがりの若造で、まだなんの実績もないエヴァンズの抜擢は、世間からの猛烈なバッシングを招く。しかし、パラマウントを買収した大企業家チャーリー・ブルードーン、アル・カポネの弁護士を務めたこともある法曹家シドニー・コーシャックといった大物たちの庇護を後ろ盾に、自らの勘と才能を頼りに、プロデューサー、ロバート・エヴァンズは映画製作というリスキーな仕事に向かってゆく。《危険じゃないかって? 当然、だからそそられるのだ》。1967年、アイラ・レヴィンのベストセラー小説『ローズマリーの赤ちゃん』を映画化するにあたって、エヴァンズはポーランド出身の異才ロマン・ポランスキーを監督に起用する。幼いころユダヤ人としてナチスの迫害を受け、今また祖国の共産主義政権による圧迫を受けつつあったポランスキー。変わり者として有名だったこの監督と、エヴァンズはなぜかウマがあった。《すぐに意気投合した。お互い人生という学校の卒業者だった》。「ローズマリーの赤ちゃん」は大成功を収めるが、翌年、ポランスキーの留守宅をヒッピー集団が襲撃。彼の妻シャロン・テイトをはじめ、その場に居合わせた全員が無惨に虐殺される。エヴァンズ自身、この日ポランスキー邸に招かれていた。編集作業が長引いたおかげで、九死に一生を得たのだ。売れっ子プロデューサーとして忙しい日々を送るエヴァンズ。新作「さよならコロンバス」のヒロインに抜擢したのは、長い黒髪が印象的なアリ・マッグロー、つづく「ある愛の詩」でも、2人は共に仕事をする。最初は、脚本を巡って衝突を繰り返していた2人だが、いつしか恋に落ち、1969年に結婚。映画自体も、社会現象と呼べるほどのヒットに。《これほど出生率を上げた映画はないだろう》。1971年、2人の間に長男ジョシュアが誕生する。このころエヴァンズは、新作「ゴッドファーザー」に全力投球していた。出産直後の妻とほとんど顔を合わせることもなく、「ゴッドファーザー」の監督フランシス・フォード・コッポラと戦い続ける日々。やがて、アリは「ゲッタウェイ」で共演したスティーヴ・マックィーンのもとに去っていった。《女心がよめるなどという男は何もわかっちゃいない》。多大な犠牲を払って完成した「ゴッドファーザー」は、アカデミー賞作品賞を受賞するという大成功を収める。以後も、「チャイナタウン」「マラソンマン」「ブラック・サンデー」と、話題作を作り続ける。しかし、公私ともに忙しい日々はエヴァンズを疲労させ、遂に彼はドラッグに手を出してしまう。《誘惑者が誘惑されたのだ》。今まで他人を魅了することで成功してきた彼が、初めて悪の誘惑に負けた瞬間だった。やがて、この悪癖が彼の前途に暗い影を落とす。1980年、エヴァンズの兄チャールズがコカイン購入の罪で逮捕。エヴァンズ自身も、コカイン所持の罪で有罪となる。それまで彼の後ろ盾となってきた、ブルードーン、コ-シャック、大物政治家ヘンリー・キッシンジャーらとの関係も気まずいものとなり、危うい立場に追い込まれるエヴァンズ。しかし、そんなさなかにも、彼は映画「コットンクラブ」の製作を発表する。監督を務めるのはエヴァンズ自身、「ゴッドファーザー」以来のにっくき相棒にして親愛なる敵フランシス・フォード・コッポラが、脚本に協力。しかし、主演のリチャード・ギアの希望により、監督はエヴァンズではなくコッポラが務めることに。しかも、脚本が仕上がる気配はまるでなし! 多くの火種を抱えながらも、なんとかスタートラインにこぎ着けた作品を、さらにやっかいなトラブルが見舞う。それは、数々の危機を切り抜けてきたエヴァンズにとって、最大最悪のスキャンダルだった……。

今日は映画何の日?

注目記事