「ガチ・ボーイ」のストーリー

北海道大学のプロレス研究会に、入部希望の学生が現れた。彼の名は五十嵐良一(佐藤隆太)、在学中に司法試験も合格できると太鼓判を押された成績優秀な学生だった。すでに3年生であることにキャプテンの奥寺(向井理)は困惑するが、折り目正しい態度がマネージャーの麻子(サエコ)らに認められて入部が決まった。良一は、ことあるごとにメモを取って、ポラロイドカメラで頻繁に写真を撮影する。そんな奇矯な行動を見ながらも、練習には熱心な良一に部員たちも感心して早くもデビュー戦が決まった。OBの君島(宮川大輔)から「マリリン仮面」のリングネームとマスクを貰って、良一は感激する。小さな商店街でのアトラクションが、マリリン仮面のデビュー戦だった。しかし、リングの上の良一は、昨日までに決めた段取りを無視して暴走、試合はガチンコ勝負となる。そのあげく、マリリン仮面は失神してしまった。運び込まれた楽屋に駆けつけたのは、良一の妹の茜(仲里依紗)だった。そこで、麻子たちは衝撃的な事実を知る。自転車で転倒して頭部を強打した良一は、高次脳機能障害を負っていた。事故以降の記憶は睡眠によって失われ、そのために膨大なメモと写真とで、前日までの記憶の復習を行っているというのだ。一方、そのガチンコ勝負でマリリン仮面は人気者となり、学園祭に登場することが決まる。興奮で眠れずに前夜を明かした良一は、記憶が残っていることに喜んで会場を目指す。しかし、バスの中で居眠りして記憶をなくした良一は、メモした手帳もバスに忘れて途方に暮れる。が、茜から助けられて、遅刻しながらも会場までたどり着くことができた。これが最後となる試合を、全身で楽しもうとする良一。そのファイトに、客席からは惜しみない声援が送られる。プロレスだけが、生きていることの実感だった良一は、リングの上で最高の感動を味わうのだった。