「ニセ札」のストーリー

戦後初の新千円札が発行された昭和25年。佐田かげ子(倍賞美津子)は、山間の小さな村の小学校教頭。彼女の悩みは、軍国主義時代の書物を全て処分したため、児童の読む本がないこと。ある日、彼女のもとを昔の教え子でブローカーの大津シンゴ(板倉俊之)が訪ねてくる。紙の原料を買い占めていた大津は、貧しい村を救うという名目でかげ子にニセ札作りの計画を持ちかける。だが、かげ子は教育者として犯罪の片棒を担ぐことはできないと追い返す。その一方で、子供たちの貧弱な教育環境、知的障害を持つ息子の哲也(青木崇高)のことを思うと彼女の心は曇った。そんなとき、今度は村の庄屋である戸浦文夫(段田安則)がやってくる。戸浦は、戦時中に日本軍が中国でニセ札作りを行っていた事実を引き合いに、彼女を説得。遂に腹を括るかげ子。こうして戸浦を筆頭にニセ札作りのメンバーが揃った。紙漉き職人の橋本喜代多(村上淳)、写真館を経営する花村典兵衛(木村祐一)、大津の愛人島本みさ子(西方凌)、軍隊時代の戸浦の部下で印刷のプロ小笠原憲三(三浦誠己)。早速、かげ子と大津は資金集めに奔走。他のメンバーの作業準備も試行錯誤を重ねながら進んでいく。しかし、計画はあっけなく中断。印刷機を買いに行く途中、猟銃を手にした大津が大金を抱えて逃げたのだ。最初から大津の目的はここにあった。大津を追う小笠原。銃声が谷間に響き渡る。資金を無事に取り戻し、計画通り印刷機を購入。だが、大津の射殺死体が川原で発見され、警察が動き出す。その晩、遂に試作品が完成。一部に失敗はあるものの精巧にできたニセ札を、試しに町で使用してみると何事もなく買い物は成功。ニセ札は村人に配られることに。喜ぶ村人の顔を見て感慨に浸るかげ子だった。やがて、新聞紙上をニセ札発見のニュースが賑わせた朝、かげ子たちは逮捕される。公判の日、被告人席には晴れ晴れとして満ち足りた表情のかげ子がいた。