「ジェイコブス・ラダー(1990)」のストーリー

ある日のこと、突然地下鉄の車内でかつてのベトナムでの体験が蘇り、何者かに刺される夢を見た時から、ジェイコブ・シンガー(ティム・ロビンス)の日常には奇妙な幻覚が交錯するようになった。見なれた風景にも違和感を覚え、現実感覚が失われたと訴えるジェイコブに同棲相手のジェジー(エリザベス・ペーニャ)は「それはニューヨークだからあたりまえ」とそっけない。が、化物の乗った車に轢き殺されそうになり、パーティーでは黒人女性に手相ではすでに死んでいるはずだと言われたジェイコブはついに高熱を出して、意識を失ってしまう。目覚めるとそこには別れたはずの妻(サーラ)や子供の姿が…。しかしそれも夢だったのか、再び気がついてみると彼はジェジーの部屋にいた。自分の精神状態に危惧を抱いたジェイコブはかかりつけの医師に相談に向かうが、医師は既に死亡、ジェイコプのカルテも失われていた。今や、ジェイコブの心の支えはベトナムで痛めた背中を診てもらっている整体治療師のルイ(ダニー・アイエロ)だけだった。そんなある日、ジェイコブはかつての戦友ポールに会い、彼もまた同じ幻覚に悩まされていることを知って驚く。がその直後にポールの乗った車は爆発して、炎上してしまった。ポールの葬式に集まったジェイコブと同じ隊だった戦友たちは全員悪夢を体験していると語り、原因が戦争にあると悟ったジェイコブは政府を相手に立ち上がろうとするが、そんな彼の前にマイケル(マット・クレイヴン)と名乗る医者が現われ、全ては政府が開発したラダー(階段)という幻覚剤によるもので、ジェイコブの隊はその実験台にされたのだと告げる。全てを理解したジェイコブは、彼を無きものにしようとする医師たちからルイの手によって助け出され、連れられた先は交通事故死した息子ゲイブの待つ階段だった。ゲイブに連れられ安らかな表情で階段を登るジェイコブ。その時ベトナムの野戦病院のベッドに横たわるジェイコブに、医師は死亡を告げる。全てはラダーがもたらした死の直前の幻覚であったのだ。