「たくましき男」のストーリー

1859年、まだ石油が鉱業として認められなかった頃の話である。ペンシルヴァニアの西部の寒村に住むピーター・コートランドは、農園から原油が湧くことを信じて試掘している。嘲笑する者もあったが彼は油が出ると確信した。ある時村の劇場でドック・ワッタソンがメジシン・ショウをやっているのをピーターは見ていた。ドックの一人娘サリーが歌って踊る艶やかな姿は彼の心をときめかせた。ところがドックが売るインディアンの不老長生万能の霊薬なるものは、石油の原油にほかならぬ。それをピーターがバラすとドックは百方弁解に努めたが、時しもドックの移動小屋から火を発して、ドック父娘は雨露も凌げない始末となる。ピーターは父娘に宿を化した。ドックの小屋が再築できるまでの数日間にピーターとサリーは恋し合う仲となり、ついに結婚する。ピーターの唯一の身内のお祖母さんは孫の結婚に大喜びだ。その喜びに加えて、ピーターが試掘していた油井から俄然原油が素晴らしい勢いで噴出した。ピーターは美しい妻を得て、更に百万長者になれる幸運を得た、と狂喜するのだった。農夫たちは鋤を捨てて石油を堀った。そしてここに一大油田が現出したが、思わぬ障害が起こったのである。彼らの原油は精錬しなければならぬのに、精錬工場まで数百マイル距っている。鉄道輸送をしなければならないのだが、鉄道会社社長のブレナンは石油を横領する考えで、運賃をベラ棒に引き上げたのである。ピーター等の抗議は一蹴された。窮余の一策、ピーターは原油を鉄管で送ることを思いついた。農夫から石油業者に早変わりした連中は、貯金をはたいて共同で鉄管を買い、協力して鉄管敷設に着手した。ブレナンはそれを妨害した。ピーターは寝食を忘れて奔走したので、ついにサリーといさかいを起こし、口論の果てにサリーは家出して父のドックが加わっているパワースのサーカスに飛び込んだ。彼女の歌はサーカスの呼び物となった。一方ブレナンは精錬工場が金を借りている銀行を買収してピーター等を圧迫した。鉄管は完成に間近いが土壇場で敗北となりそうだ。しかもブレナン方の妨害は血の雨沙汰とまでなった。別れはしたがピーターを熱愛するサリーは、成功一歩前で彼が敗れようとしていると聞くと矢も楯も堪らずサーカスの連中と共に駆けつけて暴徒を追払い、鉄道敷設はついに成った。そして期限までに送られた原油が精錬工場に注ぎ込まれたのである。