「ウェイバック 脱出6500km」のストーリー

第二次世界大戦真っ只中の1940年、ポーランド人兵士のヤヌシュ・ヴィスチェック(ジム・スタージェス)は、無実ながらもスターリン批判とスパイ活動の容疑で逮捕された。拷問を受け強制的に懲役20年を言い渡されたヤヌシュは、ソ連・シベリアにある矯正労働収容所へ連行された。収容所は夏には厳しい暑さ、冬には身を切るような寒さが襲うという過酷な環境で、さらに食事も到底人が食べるような代物ではないという有様。ロシア人俳優のカバロフ(マーク・ストロング)から収容所から脱出できるルートがあるとの話を聞いたヤヌシュ。しかし収容所から脱出できても、シベリアから西はソ連の領土が果てしなく広がり、東はすぐ太平洋に出るという地理状況。逃げ出すためには、南へ行くしかない。収容所から500km離れたところにあるバイカル湖に沿ってそのまま南下すればモンゴルとの国境へ出るとのこと。地図も確かな情報もないものの、ヤヌシュは拷問を受け彼が不利になる証言をした妻を罪悪感から救うため、自由を求めて脱出することを決意する。ヤヌシュの逃走に加わったのは、アメリカ人の地下鉄技術者ミスター・スミス(エド・ハリス)、ラトビア人の牧師ヴォス(グスタフ・スカルスガルド)、ケーキ職人で画家志望のポーランド人トマシュ(アレクサンドル・ポトチェアン)、夜盲症のポーランド人カジク(セバスチャン・アーツェンドウスキ)、ユーゴ人の会計士ゾラン(ドラゴス・ブクル)、そして犯罪集団に所属し唯一ナイフを持っているロシア人ヴァルカ(コリン・ファレル)という抱える事情も背景もバラバラなメンバー。猛吹雪の夜、7人は収容所を脱出。追っ手を撒き、森を抜けた彼らは、手持ちの食料も装備も不十分なうえ、位置関係も不確かなままひたすら歩く一行。なんとかバイカル湖へ到着した7人の前に、行き倒れる寸前の少女イリーナ(シアーシャ・ローナン)が現れる。今にも息絶えそうなイリーナを放っておけずヤヌシュは彼女も連れて行くことにするが、他のメンバーはただでさえ険しい道行きにさらに負担となる少女を加えることに猛反対する。しかしイリーナのおかげでぎすぎすとした男たちの関係が柔和になり、それぞれの境遇を打ち明けるようになり、やがて絆が生まれていく。シベリアを越え、モンゴルの大平原を通り、ゴビ砂漠を突き進む一行。命をつなぐために食べられるものは虫でも食べ、野生動物と戦う。チベット、さらにはヒマラヤ山脈を越えると、イギリス領のインドが広がる。彼らはとにかく生きるために、わずかな希望を頼りに歩き続ける……。