「天地も裂けよ」のストーリー

アブナー老人の経営するギャレージに働いている青年ジャック・ジョイスは発明に熱中していたが資本がないのでそれを実験することが出来なかった。彼は、家の後ろにある虹の瀧を利用して、大発電所を建ててやろうと計画していたが、誰も相手にしてくれなかつた。ジャックは学校友達のレヘンの父なる銀行家ホーンダイクから金を出してもらおうとしたが、それは失敗に終つた。アブナー老人の孫娘メリーはジャックの唯一の同情者であつたが、老人は天文学に興味を持つていて、木の頂辺に据につけた望遠鏡で星の観測をするのが道楽であつた。ある晩のこと老人はジャックにある秘密を打明けた。それは九月一日になると地球がある星に衝突して絶滅してしまうと云うのである。老人は彼に堅く口止めして、それを誰にも口外しないと約束させ、財産全部を彼に与えて、九月一日までに思うまゝの贅澤をしろと告げた。この不意の富によつて、ジャックは一躍町の人気者となり、今までに見向きもしなかつた町の人々は、急にジャックを祭り上げて、色々の事業に彼を擔ぎ上げた。愈々世界の滅びる九月一日が来た。ジャックは母やメリーにそのことを話して、三人は静かに死ぬ時の来るのを待つた。けれども、どうしたことか、待つていたその瞬間は何事もなく過ぎてしまつた。老人は自分の計算が違つたためにもう大丈夫だと云つたので三人は呆気にとられたが、却つて、それはジャックとメリーとを幸福に導びく動機となつたのであつた。