「慕情(1955)」のストーリー

中国人とイギリス人のハーフで女医のハン・スーイン(ジェニフ ァー・ジョーンズ)は、国民政府の将軍の夫人だったが、良人が共産軍との戦いで戦死してからは、香港病院で働いていた。ある日、病院の理事長の家でカクテル・パーティが開かれたとき、彼女はアメリカの従軍記者マーク・エリオット(ウィリアム・ホールデン)と知り合った。マークにはシンガポールに妻がいるが、性格が合わないとでもいうのであろうか、夫婦仲は冷たかった。初めはスーインもマークと深入りしないように警戒していたが、何となく彼が好ましく、マークが仕事のためシンガポールに出かけたときなど、いい知れない淋しさに襲われるのだった。やがて、海へ遊びに行ってから、2人は完全な恋人同志になっていた。マークは妻と正式に離婚して、スーインと結婚すると誓った。だが彼の妻は離婚に同意しなかった。スーインはそれを聞いて、マークを優しくいたわるのだった。その後、マークがマカオに出張すると、スーインは理事長の反対を押しきってマカオに向かった。2人の楽しい週末もほんのひとときに過ぎない。朝鮮に戦争が起こったためマークは現地へ急行しなければならなかったからである。スーインは理事長にさからってマカオに行ったことから、病院に勤めることができなくなり、友達のノラの家に寄寓することになった。彼女は毎日マークに手紙を書き、また彼からの便りを読んで淋しさをまぎらしていたが、ある日マークは共産軍の爆撃で帰らぬ人となった。新聞でそれを知ったスーインは、マークと共に永遠の愛を語り合った思い出の町を歩いたが、再び病院に戻り医術に全生涯を捧げようと決心するのだった。