「裸足で鳴らしてみせろ」のストーリー

とある田舎町。地元に残り、父の営む不用品回収会社で働く阿利直己(なおみ)は、カナヅチを克服するために出かけたプールで、槙(まき)という男に出会う。槙は、かつて世界を一周したという盲目の養母・美鳥(みどり)と二人暮らしをしている。ある日の夜道で偶然に二人と遭遇した直己は、「いつかまた外国へ行けたら」という美鳥の願望を知る。だが、それから間もなくして彼女は病に倒れてしまう。病室で美鳥からある秘密を打ち明けられ、「自分の代わりに世界を見てきてほしい」と告げられた槙は、彼女のために直己と共犯関係を結び、回収で手に入れたレコーダーを手に“世界の音”を求めて偽りの世界旅行を繰り広げていく。その途中、彼らは“触れられない”ことへの孤独を互いの中に見つけ、直己は槙へ特別な感情を抱くのだった。そしてある日、想いを募らせた直己は唐突に槙へ拳をぶつけてしまう。それをきっかけにして、録音の旅路を重ねるごとに惹かれ合う二人は、“互いへ触れる”ための格闘に自分たちだけの愛を見出していくが……。