「聖者の眠る街」のストーリー
大都会ニューヨーク。ホームレスの黒人ジェリー(ダニー・グローヴァー)は宿泊施設<フォート・ワシントン>へ向かうバスを待っていたとき、マシュー(マット・ディロン)というフィルムの入っていないカメラを持った、自称写真家の若者に出会う。彼が宿泊所に泊まるのは初めてなのを知ったジェリーは、盗みや暴力が絶えない宿泊所で夜を明かすための心得を彼に教える。翌日、乱暴者リーロイ(ビング・レイムズ)にからまれたマシューを、ジェリーは助ける。2人は自分の身の上を語り合い、互いの不幸な境遇を知る。肌の色の違いを越えマシューに対して父親のような情を抱き始めたジェリーは、彼に自分がやっている車のガラス拭きの仕事を勧める。ジェリーの心からの励ましにより、しだいに生きる希望を取り戻していくマシュー。やがて彼らは、ガラス拭き仲間のロザリオ(リック・アビルズ)が恋人タムゼン(ニナ・シーマッコ)や靴磨きの老人スピッツ(ジョー・セネカ)と住む廃屋に移ることにする。マシューはジェリーから贈られたフィルムをカメラに入れ、新しい<家族>の姿を写していった。スピッツの手が不自由なのを知ったジェリーは、マシューに直してもらうよう言う。以前彼にマッサージしてもらって脚の痛みが直ったことがあったからだ。おそるおそる老人の手をさするマシュー。やがて老人の痛みが嘘のように消え、この奇跡に胸打たれたジェリーたちは、マシューを聖人に列する儀式を行う。今度はジェリーの脚の痛みが再発、落ち込んだ彼を今度はマシューが誠心誠意励ました。だがマシューはふとしたことで警官につかまり、無理矢理リーロイのいる宿泊所へ送り返されてしまう。その夜、マシューはリーロイから1人の少年をかばったために、リーロイに襲われ重傷を負い、息絶えてしまった。仲間たちはマシューの亡骸に、彼が撮った写真を握らせ手厚く葬った。ジェリーは、<聖者>マシューの思い出を胸に、今日も働き続ける。