「ファウスト(1926)」のストーリー
天使は悪魔と賭けをしたのであった。もし汝地上に降りてあのファウストの魂を汚しその「善」を悉く滅したらんには、地上は汝が所有する所たらん、と。そして悪魔は地上へと降りて行った。悪魔はファウストの住む町にその妖術と呪とを以て疫病を蔓らせた。人々は次から次にと疫病の為に死んで行った。偉大なる化学者、医学者たるファウスト博士の力を以てしても、その疫病の伝播を止める術は、死に行く人をこの世に繋ぎ留める術は、求め得なかった。彼は絶望の余り、神を呪い天を呪い、そして魔の力に心ひかれ始めた。その時、メフィストは姿を現し、彼の不滅の霊魂に対し、地上の全ての力を与うる取引を以て彼を誘惑した。ファウストはそれによって死者を蘇生せしむる事が出来た。が、聖なるものを失った彼は十字架に恐れを抱いた。人々は彼に石を投じた。この世に生き永らえる事に憎悪を感じたファウストは毒杯を仰ごうとする。時に再びメフィストは姿を現し、青春時代の幻を以て彼を誘惑した。悪魔の誘惑に負けた彼はその云うがままになった。青春の貴公子ファウストはメフィストの助けを得て地上のあらゆる歓楽を味った。が、彼の心に未だ善は残っていた。彼は故郷に帰りたくなった。故郷で彼は清き処女マルガレーテを知った。メフィストの助けによってファウストは彼女を己が物とした。が、その為に彼女の母と兄とは死んだ。そして彼女は人々から罵られ恥しめられた。その上に彼女は生れた子を雪の夜に死に至らしめた事から、赤坊殺しとして焚刑に処せられ様とした。その刹那に悔い改めたファウストは昔の白髪の老人の姿で馳けつけた。炎の中で二人が抱き合った時、再びファウストに輝かしい青春が帰って来た。愛の勝利であった。二人の霊体は天国の門をくぐったのである。