1990年代、この映画からアキ・カウリスマキの映画を見続ける様になった。私にとってのアキ・カウリスマキとの初めての邂逅だ。ラストシーンを覚えているんだよな。
フィンランドの北部にある鉱山の閉鎖から始まる。失業した労働者はどうするか。自殺したり、南(ヘルシンキ?)に向かったり。アキ・カウリスマキの映画って、結構人が死んだり殺されたりするけど、あっさりとコメディタッチでえがいているから深刻さがないんだよな。そんなところも渇いた笑いを誘う。で、南に向かった主人公のカスリネンは自殺した同僚からもらったコンバーチブルで南に向かうが、これが幌が閉じないんだよな。冬のフィンランドをオープンカーで走るってのもふざけている。真面目にふざけているところが面白い。で、ヘルシンキに着いてから不幸続きでお金は強盗に盗られるわ、その強盗を見つけてもみ合っていると警察に捕まって逆に刑務所に入れられるわ。それでもヘルシンキで子持ちの独身女性と知り合い親しくなる。彼女の差し入れに脱獄用のヤスリが入っていて、刑務所仲間と一緒に脱獄する。この仲間ミッコネンがカウリスマキ映画に常連のマッティ・ペロンパーだ。前作の「パラダイスの夕暮れ」より少し太った気がするのだが。で、ここからがラッキーの連続で...。でラストは貨物船で密航するところで終わる。私の記憶では1人で逃げた記憶なのだが、親子3人で逃げたのね。記憶がずいぶんと薄れていた。
「パラダイスの夕暮れ」に続く純愛映画だ。
そして「カラマリ・ユニオン」、「パラダイスの夕暮れ」に続いて、勝手に海外脱出3部作と言おう。何故、海外に脱出しようとするのだろうか。彼の映画は、貧しい人達を主人公にした映画が多いが、日本から見ると、北欧は福祉の充実した国と言う印象だが、内情はやっぱり貧富の差が激しいのだろうか。幻の理想郷を目指すのだろうか。理想郷はないのに。
やっぱり渇いた笑いと言おうか、とぼけた笑いと言おうか、アキ・カウリスマキの魅力ってここだよね。