東映映画だし映画のタイトルから、当然ヤクザ映画、しかも現代ヤクザ映画と思って観たら、なんと東映無国籍アクション映画ではありませんか。日活の専売特許と思っていたら東映でもこんな映画撮っていたのね。
主演は梅宮辰夫辺りかと思ったら、安藤昇じゃあリませんか。御存じの方も多いと思いますが安藤昇は、かつて渋谷を中心に活動していた安藤組の組長だった人です。ヤクザから映画俳優になった人はそうはいないと思うし、まして組長が役者になるなんてまず他にはないのでは無いでしょうか。それに共演が伊丹十三、若山富三郎だ。若山は東映映画で活躍していたが、伊丹がこんな映画に出るなんてびっくりだ。また、伴淳三郎がシリアスな役で出てくるのも珍しい。松尾嘉代も出ているけど、殆ど男の映画と言って良く、彼女はお飾り程度の役で、演技もそんなにしていない。
監督が降旗康男なので絵作りはしっかりしている。脚本は石松愛弘と降旗康男が書いていて、ストーリー展開はそこそこ面白いのだが、やっぱり(少なくとも当時の)日本ではギャング映画は無理なのかな。ディテールをもっとしっかり書いてほしかった。一番は、金塊を盗むところ。深夜にエレベーターの天井に登ってロープを伝って上の階に行くのだが、あれ、なんで階段じゃダメなの?そして目的の部屋に合鍵で侵入して金庫を開けるんだけど、途中、守衛が回ってきて、鍵の開いている部屋を不審に思って入ってくる。なんで、鍵をしめておかないの?守衛は鍵が開いているか、閉まっているかしか確認していないのだから。もし、守衛に見つからなければ、鞄の金塊だけ盗んで、鞄をそのままにしておけば犯行がばれるのが遅れたのに。それ後の展開は上手く作っている。ただ、ラストの銃撃戦はやっぱりお粗末なんだよなあ。当時ではこれが限界なのかなあ。
若山富三郎はバイプレイヤーとして非情な悪役を見続けたので、この映画の子煩悩なキャラクターは物足りない。