ついに雷蔵最期の眠狂四郎映画だ。この映画の製作時にはすでに雷蔵の具合は良くなく立ち回りは代役を立てた、とウェキ先生が教えてくれた。
だけどそこそこの出来にはなっているよ。
今回は大奥を舞台に側室達の対立に狂四郎が巻き込まれていく。どちらが早く将軍の世継ぎを産むか、先に生まれそうな妊娠している側室を暗殺しようとしたり、その取り巻き達を殺害したりして権力を奪おうと暗躍する側室とその侍女、幕閣の一部たち。
ついに話の筋が江戸城内まで入ってきたぞ。
大奥で先に妊娠した側室お千加を松尾嘉代が演じている。松尾嘉代はこの頃にはもう日活を退社していたのか。また、朝丘雪路も初めての登場だ。彼女の役だったら誰でも良かったと思うのだが。わざわざ外から彼女を呼んでまでやらせる様な役ではなかったと思う。
大奥の実権を握ろうと暗躍するのが錦小路(久保菜穂子)と幕閣の板倉(小池朝雄)、そしてこの使い走りで眠狂四郎の名をかたって江戸城下で殺人を犯しているのが川口周馬(江原真二郎)。周馬の妹小夜(藤村志保)は錦小路の下で侍女として働いている。実は周馬と小夜は隠れキリシタン。出ました、眠狂四郎シリーズで必ずと言って良いほど出てくるキリシタン。もういい加減キリシタンを題材にするのは飽きた。でも雷様最期の眠狂四郎映画だから頑張って観ましょう。
この映画の出色は久保菜穂子さんでしょう。ちょっと年増で色っぽく妖艶で、悪い女を演じている。これがきれいなんだな。ウェキ先生に聞くと、最初、新東宝に入り、その後東映に移籍したとのこと。この映画、東映時代に出ているんだ。大映が借りてきたのかな。小池朝雄はいつも通りの悪役。もうコロンボの吹き替えを始めているよな。私は小池朝雄をコロンボから入ったので、初めて顔を見た時に想像していた顔と違う、と半分がっかりした。そして伊達三郎さん、さらに出世していた!
敵役の江原真二郎はやっぱり似合わないなあ。前作の川津祐介もそうだったけど、江原真二郎も爽やかイメージの俳優なのでどうも迫力がない。そのためなのか、映画の中盤まで顔を出さずに面をつけての登場だ。後半になってやっと顔を出してくるのだが、雷様と比べるとどうも1段、2段落ちる。最期だから天知茂が再び敵役として出てくれば良かったのになあ。
雷蔵はかなり具合が悪かった様だが、画面ではそんな様子は見えなかった。いつも通りのニヒルな狂四郎を演じていた。カッコいい雷様もこれが最期。思わず合掌。