解説
愛情に裏切られつつも、宿命に生き抜く女の姿を描いた太田洋子原作“流離の岸”を、「銀心中」の新藤兼人が脚色、自ら監督する。撮影は「死の十字路」の伊藤武夫。主な出演者は「色ざんげ(1956)」の北原三枝、「銀心中」の乙羽信子、「死の十字路」の三國連太郎、「東京の人」の金子信雄、「乙女心の十三夜」の菅井一郎、「志津野一平 浴槽の死美人」の殿山泰司など。
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この作品のレビュー
ユーザーレビュー
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ミャーノフ大佐
KINENOTEの皆さんの評価は低すぎるのではないか。いかにも新藤兼人らしい作品だった。女性の生き方をテーマに撮っている。この映画を観ていて同監督の「女の一生」を思い出していた。「女の一生」も、話の筋やラストは違っているが女性を主人公にして生きていく様を描いている。あくまでも女性の側に立って描いている。
テーマは重いんだけど、きっちり描いていて手堅い。晩年のキネ旬でベストテン入りした映画よりもしっかりと作っている。
室内でのカメラがローアングルで撮っていて、なんでローアングルで撮るのかと思ったら、今更ながらなんだけど、役者は座って演技しているからだ。座った演技を平行で撮る為にローアングルになるんだ。で立った演技だと必然仰角になる。日本家屋は梁や柱、鴨居、襖、障子があって垂直、水平のラインが出てくるので構図もしっかりしてくる。
役者は、新藤兼人映画常連の乙羽信子、殿山泰司、三國連太郎。三國連太郎は監督晩年の映画にも出ている。彼の役どころ、映画の前半では男前のいい人なのだが、こんなアクのある役者、2枚目じゃダメだよな、と思っていたら映画の筋に重要な男になっていく。それと、金子信雄が出ているんだねえ。新藤映画に金子信雄とはびっくり。嫌らしい男の役じゃなくて普通の善良な役なので、あまり目立たない。北原三枝が主役なんだけど、あんまり美人じゃない。それとこの映画、1956年製作ということは当時23才、裕次郎と結婚したが姉さん女房だったんだ。それに二木てるみが子役で出ているんだけど、私の印象はずっと前から役者をやっていた印象なので、二木の方が北原より年上かと思ってたが、年下なのに驚いた。
「流離の岸」のストーリー
千穂の母萩代は、千穂と祖母の宇多を残し高倉家の後添いに入り一年後、千穂も引取った。千穂の新しい父高倉には一人息子明吉があった。十年近い歳月が流れ千穂は高校生になった。学校で級友の聖子から、兄竜吉を紹介すると誘われた。聖子の父は病院を営み、竜吉も医者の卵。聖子は兄を盛んに賞めるが、千穂は無関心。誘いを断るが、翌朝、急に指が痛み出し止むなく深瀬病院へ駈込んだ。あいにく竜吉しかいなく、その治療を受けたのがきっかけで、千穂は竜吉の清純な心を知り、彼の愛情を素直に受入れるようになった。夏休みが終り、二人の結婚は母の萩代にも黙認され、やがてささやかな新居を構えることが出来た。と、ある日、竜吉の勤め先の県立病院に盈子が現れた。彼女は竜吉の妻で、子供までありながら竜吉は勝手に盈子を置いて逃出し離婚手続をしていたのだった。狼狽した竜吉は、足取りも重く帰宅し千穂に顛末を告白する。怒り立った千穂は高倉家に戻ってしまった。ある雨の夜、竜吉が迎えに来た。「東京へ行こう」と言う竜吉に「行くわ!何処へでも」と千穂は涙と共に竜吉の頬を打つのだった。「盈子さんに会って行きなさい」という萩代の言葉を後に二人は出発した。盈子の町の駅を通ったとき千穂は立上った。「奥さんに会うんです」と次の駅で千穂は飛降り竜吉も後を追って盈子の家に来た。千穂は盈子の手をとって「別れちゃだめ!貴女の為に!子供の為に!わたしのようになる、わたしの母のように!」と叫ぶや表へ駈出して行った。涙も涸れ、足も疲れ、素足の千穂は放心したように、朝日輝く海辺を彷っていた。「お母さん、お母さん……」とつぶやきながら。
「流離の岸」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「流離の岸」のスペック
基本情報 | |
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ジャンル | ドラマ |
製作国 | 日本 |
製作年 | 1956 |
公開年月日 | 1956年6月21日 |
上映時間 | 101分 |
製作会社 | 日活 |
配給 | 日活 |
レイティング | 一般映画 |
アスペクト比 | スタンダード(1:1.37) |
カラー/サイズ | モノクロ |
音量 | モノラル |
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