「クロノス」のストーリー
中世の錬金術師によって作られた不老不死を実現するかわり人を人ならぬ者へと変容させる生ける機械「クロノス」。天使像に封印されていたクロノスを偶然発見した骨董商人のヘスス(フェデリコ・ルッピ)は知らずにクロノスを動かしてしまい、ぜんまい仕掛けの小さなその機械に血を吸われてしまう。それ以来ヘススの身体に異変が現れた。若返った気分になり、妻メルセデス(マルガリータ・イザベル)への忘れていた情熱が甦る。そして癒されないのどの渇き、血を飲みたいという欲望。ヘススはしだいにクロノスの虜となる。夜な夜な禁じられた機械に血を吸わせるヘススを心配した孫娘のアウロラ(タマラ・シャナス)はクロノスを隠し、ヘススはアウロラの思いやりに胸をうたれる。しかしクロノスの不老不死の力を狙う富豪(クラウディオ・ブルック)は乱暴者の甥(ロン・パールマン)に命じてヘススを襲わせる。甥は勢い余ってヘススを殺してしまった。クロノスによってすでに人間ではない存在になっていたヘススは甦り、怪物じみた己の姿におののきながらも富豪と甥を殺し、その血を啜る。姿だけではなく心までも怪物になりかけた彼を救ったのは普段は無口なアウロラが言った「おじいちゃん」の一言だった。我に返ったヘススはクロノスを叩き壊す。それは彼が不死の力を自ら手放すことを意味していた。窓から差し込む陽の光の中、ベッドに横たわる異形のヘススを抱きしめるメルセデスとアウロラの姿があった。