「母の眠り」のストーリー
ニュージャージー州。紅葉の秋。新聞記者のエレン(レニー・ゼルウィガー)はガンに冒された母ケイト(メリル・ストリープ)の看病のためにニューヨークから故郷へ戻ってきた。それは大学教授で作家の厳格な父ジョージ(ウィリアム・ハート)の頼みだった。家庭を切り盛りし、地元の婦人クラブの顔でもある良妻賢母の専業主婦である母の平凡な生き方に抵抗を覚えていたエレンだが、実際に彼女の代理をつとめてみてようやくその大変さに気づき、母に尊敬の念を覚えるようになっていく。だが、自分に看病を任せきりにして夜更けまで家に帰らない父への反発は強まり、エレンは彼と衝突。ふたりの間はぎくしゃくしたものに。苛立つエレンはケイトのすすめもあり、ニューヨークに戻り、かねて狙っていた上院議員のスキャンダルを追うが、当の議員から妻子への思いを聞かされる。自分の家族を思い出したエレンは、結局それを記事にはできなかった。そしてクリスマス・イヴ。エレンに連れられ、ケイトは自分も飾りつけに参加した広場に立つツリーを誇らしげに見守る。それは彼女の人生のささやかな栄光だった。新年を迎え、ケイトの病状は重くなった。彼女は父を非難するエレンを、珍しく強い言葉でさとす。その数日後、エレンは父が妻を失う悲しみに耐えられず酒場で酔っているのを目撃する。家にたどりついた彼は、ケイトの胸で赤子のように眠った。やがて、ケイトはバスタブからもひとりでは出られないほど体力を失っていった。「もう生きるのはいや」と、エレンに懇願するようになるケイト。エレンはそれを聞き、鎮痛剤のモルヒネを大量摂取すると、安らかに死を迎えるという医師の言葉を思い起こす。このモルヒネを母の食べ物に混ぜれば…。それから間もなく、ケイトは永遠の眠りについた。