「月」のストーリー
祖母の死をきっかけに田舎の家を引き払い、そのお金で東京の予備校に通うことを決意した夏海は、浅草”ロマン座“の花形ストリッパーで、”浅草の月“と謳われた母・遥のマンションで同居することになった。だが、小学校5年生の時に別れたきりの母とうまくいく筈はなく、何かと反発を繰り返す夏海。そんな彼女の支えとなったのは、ロマン座で照明係のバイトをしながら司法試験の勉強をしている達也だった。ところで、遥には寿司屋を営む松尾という恋人があった。その松尾には多額の借金があり、遥は支配人の富田に前借りしては借金の肩代わりをしてやっていた。ところが、松尾の店で食中毒が発生。休業に追い込まれた彼を助けたい一心から、遥は夏海の貯金に手をつけてしまう。これに怒った夏海は、マンションを飛び出し達也のアパートに転がり込むが、実は達也もまたヤクザの父親とうまくいっていなかったのだ。彼女は、そんな達也との恋を通し、次第に遥との関係を見直すようになっていく。ある日、富田はロマン座の20周年を記念して特別興行を打つことを決めた。勿論、一番の見せ場は遥の踊りだ。だが、そんな遥に海外へ逃亡した松尾から一緒に来て欲しいと連絡が入った。舞台を取るか松尾との愛を取るか、揺れ動く遥の気持ちを察した夏海は、実は松尾の子を宿していた遥を彼の元へ送り出してやる。そして、母の代役を務めるべく浅草の月二代目を襲名し、司法試験に合格した達也が照らし出すロマン座の舞台に立つと、立派にその大役の任を果たすのだった。こうして、ロマン座特別興行の初日は成功のうちに幕を閉じた。だがその時、富田はロマン座の閉館を決めていた……。