「死者の学園祭」のストーリー
手塚学園の講堂の床に脚を固定された張り付けのピアノには、ある悲しい恋の伝説があった。それは80年前、妻子を置いてドイツからやって来た美術教師、オイガン・メトカフと音楽教師・手塚澄子の許されぬ愛の物語。想いを寄せ合いながらも学園内で公然と会うことの出来ないふたりは、澄子が弾くピアノで想いを伝え合っていた。ところが、ピアノが礼拝堂へ移された為にメトカフのいる美術室に音が届かなくなり、ふたりの恋は終わりを告げ、メトカフは帰国。失意の澄子は自らの命を絶ち、以来、そのような出来事を繰り返してはならないと、ピアノは講堂に固定されたのだ。さて、そんな悲恋を『青い瞳の天使』という題で台本にした学生・由子が自殺した。彼女の親友で演劇部の部長である真知子は、学園創立80周年を祝う学園祭でそれを上演しようと運動を開始。顧問の倉林らの助けによって、漸く学園長・手塚の許可を貰う。そんな折、真知子のクラスに神山英人という転校生がやってくる。だが、彼が現れた時から真知子の周囲で次々に不可解な事件が勃発するのだった。部員である治子と真弓の謎の死、メトカフ役に決まっていた美術教師・ソンヒルの自殺、そして学園のパソコンで見つけた不可思議な数字の羅列。警察の捜査で、事件は由子と交際していたソンヒルが彼女の妊娠が世間に露呈するのを恐れて彼女を殺害、更にそれを知った治子と真弓を殺して自らも命を絶ったということになった。しかし、実は由子の兄であった英人から学園で不正な絵画の売買がされていることを聞かされた真知子は、真犯人が他にいることを悟り、一時は中止の危機に陥った芝居に事件を解く鍵があるのではないかと、芝居の上演を決意する。そして、学園祭の日。真知子は、真犯人が手塚であることを突き止める。手塚は、真知子の父で学園内の美術館長を務める正造に贋作を作らせ、それを不正に取り引きしていたのだ。そして、その秘密を知った由子たちを殺害。更に、80年前に帰国した筈のメトカフも、実は贋作作りに荷担させられ、しかも手塚に殺害されていたことが解る。真相を知った真知子を襲う手塚。すんでのところで、彼女は駆けつけた倉林と英人のお陰で助けられるも、手塚は自殺。父も逮捕される。その後、一連の不祥事で学園は閉鎖となった。英人は元の学校に戻り、倉林も他校への転任が決まる。そして真知子は、数々の悲しみを乗り越え、力強く歩き始めるのだった。