「タクシデルミア ある剥製師の遺言」のストーリー
第二次世界大戦時、ヴェンデル・モロジュコヴァーニ(ツェネ・チャバ)は当番兵だった。彼は中尉とその妻、そして美しい2人の娘と一緒に寒村に配置されるが、中尉とその家族に蔑まれ寂しい日々を送っていた。彼の唯一の楽しみは妄想の世界に溺れ、自慰行為に耽ることだった……。時は巡り、ハンガリーには共産主義の時代がやってくる。バラトニ・カールマン(トローチャーニ・ゲルゲイ)はハンガリーで大人気となった“スポーツ大食い”の選手となった。子供のころから経験を積み、国家代表として大食いアスリートとして活躍していた。やがて大食い女性チャンプのギゼラ(シュタンツェル・アデール)と出会い、結婚し、子供であるラヨシュを授かることができた。しかしそんな折、とある事故がカールマンの身を襲う……。それから月日は流れ、現代に至る。ラヨシュ(マルク・ビシュショフ)は成長し、ハンガリーで剥製店を営んでいる。スポーツ大食いが過去のものとなった今、妻は家出し、家には昔の栄光にすがり続け極度の肥満症となった父親だけがいる。身動きができないためラヨシュが献身的に世話をしているが、父親は体躯が細く寡黙なラヨシュに愛情の欠片さえ見せようとしない。恋心を抱いていたスーパーのレジ係の女性にも振られ、誰からも愛してもらえないラヨシュは、かつて祖父・モロジュコヴァーニがそうであったように自らの世界へ没入していく。しかし、祖父が世界の大きく凶暴な時流の中でその想像力を自慰行為に向けていたのと違い、ラヨシュは自らの欲求不満と想像力を糧にアートとしての「剥製術」に没頭し、究極の剥製作りを目指して活動を始める。なぜラヨシュは剥製にこだわるのか?そして、彼が目指す究極の剥製とは何なのか?