「ホルテンさんのはじめての冒険」のストーリー
ノルウェー鉄道の運転士、オッド・ホルテン(ボード・オーヴェ)は、オスロの線路沿いのアパートに住んでいる。今朝も早起きして作った弁当とコーヒーを入れたポットをカバンに詰め、出がけに小鳥の籠に布を掛ける。だが、そんな規則正しい生活も67歳の定年を迎える今週末で終わろうとしていた。退職前夜、ホルテンは送別会で約40年の勤続を表彰される。同僚のアパートでの二次会、ホルテンがタバコを買いに行って戻ると建物の玄関から入れず、工事用の足場を伝って目指す最上階のひとつ下の階に侵入。その家の子供に引き留められ、朝まで眠りこけた彼は、運転するはずの列車に乗り遅れてしまう。人生初の遅刻に混乱するホルテンだったが、気を取り直して老人ホームにいる母ヴェラを訪ねる。もう息子の顔を覚えていない母も少女時代はスキージャンパーで、今もスキー板を大事にしていた。ホルテンは、空港職員フロー(ビョルン・フローバルグ)に電話をかけ、以前からオファーされていたヨットを売却する意思を伝える。ところが、フローとの商談で売却の決意が揺らぎ、トイレへ行くと言って逃げ出した途中、愛用のパイプをなくしてしまう。行きつけのタバコ屋へ行くと、店主の夫人(ギタ・ナービュ)が、夫は先週他界したと告げる。一緒に水泳をした店主を思い出しながら、夜のプールへ行ったホルテンは、誰もいないプールで泳ぐ。水からあがると、ロッカー前に置いたはずの靴がない。仕方なく彼は赤いハイヒールを履いて外に出る。路上に横たわっている老人シッセーネル(エスペン・ションバルグ)と出会ったホルテンは、彼を家まで送っていく。ホルテンが、母が女であるためにスキージャンプ国際大会出場の夢を果たせず、自分は勇気がなくて母を失望させたと打ち明けると、シッセーネルは「人生は手遅ればかりだが、逆に考えれば何だって間に合う」と語る。そして、彼は特技だという目隠しドライヴにホルテンを誘った……。