解説
東日本大震災で、自宅兼店舗を流された岩手県陸前高田市の種苗店経営者・佐藤貞一の姿を追ったドキュメンタリー。震災後の自宅跡地にプレハブを建て、営業を再開。全て手作りで歩みを進める佐藤は、同時に被災体験を独学の英語で綴って自費出版していた。監督は、震災後に東京から陸前高田に移り住んだ映像作家・小森はるか。本作が劇場用長編映画デビュー作となる。
この作品のレビュー
映画専門家レビュー
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映画評論家北川れい子小森監督の何よりの手柄は、すでに国際人の種苗店の店主、佐藤氏に出会ったことだろう。据えっ放しのカメラの前で佐藤氏は、あれこれの仕事をこなしながら、震災のことや津... もっと見る
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師千浦僚観始めはイライラした。古臭いだろうがビデオ以前のドキュメンタリーを観てきた記憶や感覚がまだ根強くあって、それとは体質の違うとにかく素材だけは沢山撮られている近年... もっと見る
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映画評論家松崎健夫日頃から独り言が多いのか、それともカメラが回っているから喋るのか? 佐藤さんはよく喋る。本作が特異なのは、ビデオカメラで家族の思い出を記録した映像のように、被写... もっと見る
「息の跡」のストーリー
岩手県陸前高田市。荒涼とした大地にぽつんと佇む種苗店“佐藤たね屋”。東日本大震災の津波で自宅兼店舗を流された佐藤貞一は、その跡地に自力でプレハブを建て、営業を再開した。手描きの看板に手作りの仕事道具、山の落ち葉や鶏糞を加えた苗床の土。水は手掘りした井戸からポンプで汲みあげる。その一方で、佐藤は自らの被災体験を独習した英語で綴り、自費出版していた。「The Seed of Hope in the Heart」と題したその一節を朗々と読みあげ、さらに中国語やスペイン語での執筆にも挑戦。さらに佐藤は、地域の津波被害の歴史を調べ、過去の文献の信憑性を自力で検証していた。その姿は、ロビンソン・クルーソーのようにも、ドン・キホーテのようにも見える。不得意な外国語で書き続ける佐藤は、誰に何を伝えようとしているのか……。
「息の跡」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「息の跡」のスペック
基本情報 | |
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ジャンル | 社会派 |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2016 |
公開年月日 | 2017年2月18日 |
上映時間 | 93分 |
製作会社 | カサマフィルム=小森はるか |
配給 | 東風 |
アスペクト比 | 16:9 |
カラー/サイズ | カラー |
公式サイト | http://www.ikinoato.com/ |
コピーライト | (C)2016 KASAMA FILM+KOMORI HARUKA |
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