ぴっぱらん!!の映画専門家レビュー一覧
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ライター、編集
岡本敦史
ファミリー感溢れるアウトロー群像劇という「日本統一」シリーズなどでおなじみの話法による、極道一家クロニクルの第1部。伝説のヤクザ三兄弟が再集結するまでを描いた物語なので、本当に盛り上がるのは第2部以降なのだろう。せっかく長尺で在日アウトロー家族の年代記を描くのだから、もっと生活のディテールを丹念に織り込んでもいいと思ったが、ジャンルの定番描写とキャストの見せ場を積み重ねるのに忙しく、その余地が埋没しているのが惜しい。喫煙シーンの弱さも気になった。
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映画評論家
北川れい子
俳優で劇団の主宰者でもある崔哲浩の監督デビュー作「北風アウトサイダー」(22)を観たとき、その前のめりな血の絆と負けん気に、井筒和幸監督の初期作品を連想したのだが、今回は血の絆だけではなく、さらに前のめりな暴力抗争が描かれ、画面から血が飛び散る勢い。ただ百鬼組の三兄弟はともかく、敵対するいくつもの組や構成員など、登場人物が多すぎるのと、時間軸がジグザグするのがややこしく、しかも話が尻切れトンボ! 各俳優陣の熱気に溢れた演技や凝ったカメラアングルには感心する。
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映画評論家
吉田伊知郎
撮影所の時代に作られたやくざ映画と、Vシネマの時代に作られるそれは似て非なるものだが、隙間に双方の魅力が凝縮されたインディペンデントのやくざ映画がある。予算が限られようが、作劇の均衡が崩れようが、やりたいことを詰め込んだ作りは巧拙を超えて見入ってしまう(逆光のキラーショットも嬉しくなる)。殊に監督自身のアイデンティティを投影した在日やくざ像が鮮烈だが、大人数を捌く交通整理のために埋もれた感がある。続篇は登場人物を絞って、じっくり見てみたい。
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