知らないカノジョの映画専門家レビュー一覧
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文筆家
和泉萌香
この世界、一つの現実ではよりによってパートナーと自分、どちらか一人の成功しか存在せず、自分の存在が相手の幸福に作用するというなかなかにシビアな設定ながら、中島健人、miletふたりの好演で爽やかなラブストーリーとなっている。とはいえ、パラレルワールドでの彼の奮闘っぷりもファンタジー内のファンタジー、といったふうでとんとん拍子に出来すぎかつ、最後もあっけなくハッピーエンドで、「もしも」という言葉のしみじみとした奥行きは希薄。
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フランス文学者
谷昌親
ラブストーリーに音楽、そしてファンタジー的要素まで加われば、三木孝浩監督の独壇場となる。実際、それこそさまざまなファクターをそつなくまとめあげる手腕はみごとなものだ。しかし、ファンタジーだとはいえ、「ここで生きるしかない」と作中人物に言わせておきながら、結局はもうひとつの世界への未練を断ち切らせないのであれば、それまでの人物たちの営為はどうなってしまうのか。ハッピーエンドになること自体はかまわないが、そこに至る過程をこそ映画は描くべきではないのか。
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映画評論家
吉田広明
パラレルワールドものだが、どちらの世界にあっても上手くいっている自分を求める主人公の身勝手さが目立って見える。最終的に自分の成功を諦めることで彼女の成功の持続を望むのも、自己犠牲のつもりなのが苛立たしい。彼の書く小説(ラノベの戦闘ものだ)と二人の現実がうまく繋がっているかに見えないし、二つ目の世界におけるステータスの差が大きすぎ、それを繋げるはずの祖母が挿話に留まるなど、構成が無理筋で強引に見える。よって二人とも成功者のエンディングも見ていて白々しい。
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