劇映画 孤独のグルメの映画専門家レビュー一覧

劇映画 孤独のグルメ

松重豊主演の人気グルメドラマシリーズの劇場版。個人で輸入雑貨の貿易商を営む井之頭五郎は、かつての恋人の娘・千秋から連絡を受け、パリへ。千秋の祖父・一郎から、“子どもの頃に飲んだスープがもう一度飲みたい”と依頼された五郎は、食材探しに旅立つ。共演は「劇場版ドクターX」の内田有紀、「正欲」の磯村勇斗、「かくしごと」の杏、「月」のオダギリジョー。脚本(田口佳宏と共同)・監督を主演の松重自身が兼任。テレビ東京開局60周年記念特別企画。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    ドラマシリーズを10年以上やり続けてきた主演俳優だからこそ実現できる、作品のバランスを知り尽くした演出に打たれた。結果的に、破格の準備期間を与えられた初長篇だと考えれば、なんと贅沢な一皿であることか。「こういうのでいいんだよ」という原作の有名なフレーズは、作品の基本精神でもある。怠惰な手抜きではなく「足るを知る」という心を、映画も見事に体現している。冒頭から塩見三省に花を持たせ、海を越えてユ・ジェミョンの好演を引き出す、役者同士の絆にも痺れた。

  • 映画評論家

    北川れい子

    おや松重豊、この劇場版では監督・主演・脚本(田口佳宏と共同)まで兼任、さしずめ北野武ばり。彼が長きにわたって主人公を演じてきた勝手知ったるシリーズドラマということもあるのだろうが、なかなかの度胸である。しかもワケありスープの食材を探して、日本国内だけでなくフランス、韓国まで駆けずり回り、とんでもないアクシデントも。けれども松重豊の、そして主人公のキャラのせいか、程良いユーモアと洒落っけがあり、素直に楽しめる。各地の一品との出会いも気張らず、おいしそう。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    食レポには、綺麗かつおいしそうに食べる技術が求められるように、食の映画も繊細な描写が求められる。TVシリーズは未見だったが、食べ物を前にしたときの松重の卑しくならない演技が絶品で、人気に納得。塩見三省、村田雄浩への愛情溢れる撮り方も良く、あくまで食を軸にしたドラマから逸脱しすぎないバランスも絶妙。食材探しの旅とラーメン屋を復興させる話を俳優が監督した本作、つい伊丹十三(『遠くへ行きたい』の親子丼珍道中の回+「タンポポ」)と比較してしまう。

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