今日の空が一番好き、とまだ言えない僕はの映画専門家レビュー一覧
今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は
お笑いコンビ『ジャルジャル』の福徳秀介が小説家デビューを果たした青春恋愛小説を、「私をくいとめて」の大九明子監督が映画化。冴えない日々を送る大学生・小西は、ある日お団子頭の桜田の凛々しい姿に惹かれて、声をかけ意気投合するが……。主人公の小西徹を「朽ちないサクラ」「世界征服やめた」の萩原利久が、小西が惹かれる同級生の桜田花を「ナミビアの砂漠」「あんのこと」の河合優実が演じる。2024年第37回東京国際映画祭コンペティション部門公式出品作品。
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評論家
上野昻志 |今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は
大学生の話、それも学園を主舞台にした物語などに、ほとんど興味をひかれないのだが、よく作られている。なかでも、銭湯のバイト仲間、さつちゃんが、小西に告白というか想いのたけをぶつけるシーンは、演じる伊東蒼の語りはむろん、彼女に当てる照明も含めて感心した。男の鈍感さが感じられたりもするし。それに類するシーンは、ほかにもあると思うが、逆に、そこまで画<え>にして作り込む必要があるのかと、いささか過剰に感じられる部分もあって、その分、★ひとつ減。
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リモートワーカー型物書き
キシオカタカシ |今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は
恋愛映画・青春映画としてパッケージングされた作品で“ネタバレにご配慮を”と言われると“非現実的な超展開が待っているのでは?”と身構えてしまうのだが、本作の場合は超現実的……日常でいつか必ず、しかし時には予期せず訪れる痛みを真摯に描き出している。“何でも言葉で説明しすぎ”が邦画を貶す定型文となって久しいが、感情を真正面から言葉にすることは自己・他者と向き合うことでもある……「AB!」「異能バトル」をも超える伊東蒼の独白はじめ、独特な言語化感覚が魅力的。
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翻訳者、映画批評
篠儀直子 |今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は
主人公と比べて女性キャラに実在感が足りないようにわたしには見えるのだが、主人公の視点から描かれている以上仕方ないのだろうか。それ以上にクライマックス、この状況でこんな行動をするのは人としてどうなのかと感じてしまい、そういう価値判断を作品評価に持ちこむのはよくないとは思うのだが、どうしても高得点はつけられなかった。とはいえ、主人公と友人がふとデモに加わる描写などなかなかによく、最も工夫して演出した箇所であろう3回の長台詞のシーンはどれも撮り方含めて見ごたえあり。
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