ファイトの映画専門家レビュー一覧
ファイト
2024年4月にデビュー50周年を迎えた現役プロレスラー、大仁田厚に迫るドキュメンタリー。通算7度の引退宣言から8度目の復帰を果たした大仁田が語る壮絶な人生、隠された意外な過去。さらに関係者たちの証言から、人間・大仁田厚の真の姿を多角的に映し出す。監督は、電流爆破を手がける花火師であり、大仁田と長年タッグを組んできた川上孝行。構想と撮影に8年、3200時間を超える密着取材を敢行した。
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文筆家
和泉萌香
世代のせいかプロレスにはまったく明るくない私。約8年間の取材をとおして構成されたドキュメンタリーとのことだが、大仁田厚氏のキャリア初期のフッテージは用いられず、描かれるのは近年の状況と周囲の人々の大仁田にまつわる思い出や証言、彼らそれぞれの話などで、肝心の大仁田というレスラーの歴史やいまここに至るまでの輪郭が?み難い。タイトルづけされた各チャプターも有機的に繋がっているとはいえず、うちうちの記録と物語にとどまってしまっている。
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フランス文学者
谷昌親
大仁田厚の魅力が十二分に描かれているドキュメンタリー映画である。だが、映画のなかでその魅力を語っているのは、もともと大仁田厚の賛美者だった人たちであり、そうした賛美者ばかりが登場する映画なのである。大仁田厚やプロレスにさほど興味のない人間の眼からすると、どうしても内輪褒めのように見えてしまう部分があるのは否めない。自殺する若者が増えているという重要な問題にも結びつけようとしているが、そうした問題を扱うだけの材料を充分に提示しているとも思えない。
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映画評論家
吉田広明
プロレスラーのこれまでの軌跡を描くドキュメンタリーということだが、この人にまったく関心がない者にも届く作品かといえばそうではないというしかない。彼をめぐる人のインタビューを見てもこの人の存在に興味が生じることは少なくとも筆者にはなかった。映像的にも、例えば子どもがいなかったジャイアント馬場に実子のようにかわいがってもらったとのナレーションで、まったく関係のない親子の映像を流す。そんな映画。関心がある人だけ見ればいいのではないか。
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