片思い世界の映画専門家レビュー一覧

片思い世界

「花束みたいな恋をした」の土井裕泰監督と脚本家・坂元裕二が再び組み、広瀬すず、杉咲花、清原果耶を主演に迎えたヒューマン・ドラマ。美咲、優花、さくらは、家族でも同級生でもないが、東京の片隅にある一軒家で楽しく気ままな3人だけの日々を過ごしている。12年間一緒にいる彼女たちの、誰にも言えない片思いとは……。悩み迷いながら優しさを失うことなく前を向く3人の希望の物語を紡ぐ。
  • 評論家

    上野昻志

    片思いということ自体は、珍しくはない。だが、そこに世界という言葉があることが、この物語の重要なキィである。一軒の家で仲良く暮らす女性3人組。まず、この3人の組み合わせがいい。朝になると、3人は、それぞれオフィスや大学、水族館などに行き、仕事や学業に励む。なんの変哲もない日々に見えるが、少しずつ、3人の生きている世界と、日常とのズレが顕わになっていく。やがて、3人それぞれが、想いを通じさせたい相手に近づくところから、物語は一挙に核心に向かう。見事!

  • リモートワーカー型物書き

    キシオカタカシ

    どういうわけか「少年」と謎のシンクロニシティが発生。90年代・Y2Kに起きた事件が下敷きかつ、早くも序盤で明かされるツイストが1999年・2001年に製作された映画そのまんま。「(時代は)なんかこう一周したりするのよ」という昔の人の言葉を思い出した。類似作品と比べれば“クライマックスでどんでん返しになっていたような設定を主人公たちが最初から自覚している”点が新機軸だが、それは“受容”ではなく“否認”……後に遺された者の願望充足ではないだろうか。真摯だが、奇妙な味わい。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    本誌が出た時点でたぶん世の中全員が言っていると思うけど、坂元裕二の関心はいま、マルチバース的な世界や並行世界にあるのだなと思わせる、正しく「ファーストキス」の姉妹篇と言えるだろう作品。彼が以前からTVドラマでも取り上げていた、重いテーマも絡む。坂元作品特有の饒舌さはだいぶ控えめ。合唱シーンからラストまではもっとコンパクトにまとめてくれるほうが好みだが、土井演出は人物の感情を丁寧にすくい、横浜流星の悲しみ、椅子に乗る妹を無言で見つめる杉咲花の表情など忘れがたい。

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