新世紀ロマンティクスの映画専門家レビュー一覧
新世紀ロマンティクス
巨匠ジャ・ジャンクーが、一人の女性と彼女の元を去った恋人の20年を通して、中国社会の変化を浮き彫りにした一大叙事詩。2001年、大同を出て戻らない恋人ビン。それから22年間、チャオは彼を探し続ける。出演はジャ・ジャンクーの長年のミューズでもある妻のチャオ・タオ。「青の稲妻」や「帰れない二人」など、ジャ・ジャンクーが総製作期間22年を費やし、これまでの自らの作品のフッテージを活用して、変わりゆく中国社会や人々の姿をコラージュしながら、壮大な21世紀の旅を描ききった。2024年・第25回東京フィルメックス特別招待作品としてオープニング上映。
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映画評論家
鬼塚大輔 |新世紀ロマンティクス
25年かけて映像を撮り溜める。主役二人は、三つの時代のストーリーで、その都度実年齢で役を演じる。「フォレスト・ガンプ」などのハリウッド映画なら、いや、近年の中国娯楽映画でも、CGIを駆使して作り上げるはずのことを、“本物”で描き切ってしまう力技と映像に感服。彼らの物語であると同時に、我らの物語でもあるという思いはコロナ禍が描かれることで一気に高まる。“時”に流されるだけでなく、自らの足で走り続けることを選ぶヒロインの姿が清々しい。
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ライター、翻訳家
野中モモ |新世紀ロマンティクス
世紀の変わり目に「若い女」をやっていた世代の自分としては主人公の身の処し方が他人事じゃないというか、いろいろ思い出し反省会不可避で胸が痛い。中国なんて「失われた三十年」だった日本に比べてギラギラでイケイケだったんじゃないの?と思いきやそうでもなかった人々も当然いるわけで、見たことのない景色、見たことのない市井の人々の行動に目を見張りました。たとえばダム工事現場、教会の宿泊施設、廃ビルの遊興施設(?)、そして歌劇の曲を歌う中年女性たち。何あれ!?
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SF・文芸評論家
藤田直哉 |新世紀ロマンティクス
これまでのジャ・ジャンクー作品のフッテージや、撮影の合間などに撮り溜めていた映像と新規撮影部分を繋げた作品なのだが、なんと実際に同じ役者たちが登場し、二十年以上の時間が実際に経過する。同一の役者と仕事をし続けてきたからこそ可能になる大技を通じて、急速な近代化・現代化によって変容する現代中国の「時間」自体を主題化する驚きの一作。コロナ禍以降の現代中国と、前半の光景がどれだけ違うことか。変容の葛藤や両義性の詩情を味わい尽くせる快作。
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