Playground/校庭の映画専門家レビュー一覧

Playground/校庭

ベルギーの新鋭ローラ・ワンデル監督の長編デビュー作。社会の縮図でもある学校に投げ出された7歳の少女の葛藤や不安心理を生々しく浮き彫りにし、2021年第74回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞したドラマ。小学校に入学した内気なノラは、兄アベルが大柄なガキ大将にイジメられているのを目の当たりにしショックを受ける。舞台を小学校の敷地内に限定し、全編をノラの視点で描いている。ローラ・ワンデル監督は本作で長編デビュー。ノラを映画初出演のマヤ・ヴァンダービークが、父親を「またヴィンセントは襲われる」のカリム・ルクルーが、担任教師を「ハッピーエンド」のローラ・ファーリンデンが演じる。2022年第94回アカデミー賞国際長編映画賞ベルギー代表およびショートリスト選出作品。
  • 映画評論家/番組等の構成・演出

    荻野洋一

    ベルギーにおけるいじめを描くが、マスターショットを除外し、主人公のヨリだけをフォローしていく。なぜこんなにダルデンヌ兄弟の真似をしようと思ったのだろう。そこに何が生起しつつあるかよりも、主人公にどう見えているかのみを追求する姿勢は、ひとつの見識ではある。ただし流行りの被写界深度浅めのルックは対話の余地も発見の細部も遮断し、単一方向へと頑迷に流れるのみ。カメラの切り返し、精神の切り返しが重要だ。ゴダールの画面も被写界深度浅めだったが、切り返しが主役だった。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    子役の演技が達者な映画を観ると、いつも「すごいな」と思いつつ「大丈夫なのかな」とも感じてしまう。外国語の映画を観ると、上手に見える演技(子役にかぎらず)が的確なのかどうかがネイティブでない僕には本当にわかってんのかなといつも疑ってしまうが、この映画の子役はすごい。ますます「大丈夫なのかな」と思う。あと映画と現実ということも考えてしまう。ほんとは子どもたちに観てほしい映画なのだが、観せられる機会は少ないだろう。こういう映画をなんとか学校で上映できないものか。

  • 著述家、プロデューサー

    湯山玲子

    学校という閉じた空間の中で、子どもたちが社会性とそれとは無関係ではない“悪”を、恐怖や不安を発火点に経験していくさまは、ルソーの教育論『エミール』の合わせ鏡のよう。特筆すべきは映画全体を覆うかなりの音量の子どもたちが発する自然音BGMで、それすなわち、彼らのエネルギーの強さと生命力を表徴。この体感的な演出も含め、子どもの世界特有の理性&思惑なしの言動を、細部にわたり見事に映画に喚び活けている。お兄さん役のギュンター・デュレの暗い色気は、今後要チェック。

  • 映画評論家/番組等の構成・演出

    荻野洋一

    ベルギーにおけるいじめを描くが、マスターショットを除外し、主人公のヨリだけをフォローしていく。なぜこんなにダルデンヌ兄弟の真似をしようと思ったのだろう。そこに何が生起しつつあるかよりも、主人公にどう見えているかのみを追求する姿勢は、ひとつの見識ではある。ただし流行りの被写界深度浅めのルックは対話の余地も発見の細部も遮断し、単一方向へと頑迷に流れるのみ。カメラの切り返し、精神の切り返しが重要だ。ゴダールの画面も被写界深度浅めだったが、切り返しが主役だった。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    子役の演技が達者な映画を観ると、いつも「すごいな」と思いつつ「大丈夫なのかな」とも感じてしまう。外国語の映画を観ると、上手に見える演技(子役にかぎらず)が的確なのかどうかがネイティブでない僕には本当にわかってんのかなといつも疑ってしまうが、この映画の子役はすごい。ますます「大丈夫なのかな」と思う。あと映画と現実ということも考えてしまう。ほんとは子どもたちに観てほしい映画なのだが、観せられる機会は少ないだろう。こういう映画をなんとか学校で上映できないものか。

  • 著述家、プロデューサー

    湯山玲子

    学校という閉じた空間の中で、子どもたちが社会性とそれとは無関係ではない“悪”を、恐怖や不安を発火点に経験していくさまは、ルソーの教育論『エミール』の合わせ鏡のよう。特筆すべきは映画全体を覆うかなりの音量の子どもたちが発する自然音BGMで、それすなわち、彼らのエネルギーの強さと生命力を表徴。この体感的な演出も含め、子どもの世界特有の理性&思惑なしの言動を、細部にわたり見事に映画に喚び活けている。お兄さん役のギュンター・デュレの暗い色気は、今後要チェック。

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