HERE 時を越えての映画専門家レビュー一覧

HERE 時を越えて

「フォレスト・ガンプ/一期一会」のロバート・ゼメキス監督と俳優トム・ハンクス&ロビン・ライトが再び組んだドラマ。ある地点にカメラを固定し、そこで生まれたリチャードとその妻マーガレットを中心に、紀元前から現代までカメラの視点で生きるものたちを映し出す。原作は、2016年アングレーム国際漫画フェスティバル最優秀作品賞を受賞したリチャード・マグワイアのグラフィック・ノベル『HERE』。VFX技術を用いながら、トム・ハンクスとロビン・ライトは10代~70代までシーンごとの年齢に合うように動きを調整しながら演じた。
  • 映画評論家

    川口敦子

    アメリカの現代史を駆け抜けた「フォレスト・ガンプ」。今度はアメリカ、歴史との向き合い方を定点観測としてみる試みといえるだろうか。足下に恐竜の時代から降り積もった時の堆積があること、歴史は今ここにあるのだと――そんな大きなことをゼメキスは小難しくいうのではなくVFXを駆使もしながらささやかな家族の物語ごしに語ってみせる。一部屋で移ろう家族の物語の部分でD・リーン「幸福なる種族」を想起させるとの海外評もあり、その先に小津を見る眼もあるようなのが興味深い。

  • 批評家

    佐々木敦

    原作のグラフィックノベルは読んでいて、映画化を楽しみにしていた。マンガの「コマ」が映画では「フレーム」である。ゼメキス監督は原作と同じく「居間」にカメラを固定したまま、フレーム・イン・フレームを多用することで映画ならではの表現を生み出している。時間のスケールも原作から大幅に縮小し、ヒューモアとペーソスに満ちた「ある家族の物語」に仕立て直している。めまぐるしく時間が前後するが筋が見えなくなることはない。ラストは(やると思ったけど)すこぶる感動的。

  • ノンフィクション作家

    谷岡雅樹

    時空を超えた定点劇だ。作り込まれたスケールの大きな映像に魅了される。同時に忘れていた苦い過去を想起させてくる。人物や風景が時を超える。今昔比較の重さと喪失。人類史総決算のごとき画の洪水は、儚くも見える。人間さえ調度品のごとく、完成された労作を見る思いだ。かつてアメリカ映画に漠然と見た憧憬も蘇り心奪われる。映画は、窓を見る行為だと改めて知らされる。ある意味で、家は穴の開いたノアの箱舟だ。修繕しているときこそ華だ。もう一つの「関心領域」を見ている気持ちになる。

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