スイート・イースト 不思議の国のリリアンの映画専門家レビュー一覧

スイート・イースト 不思議の国のリリアン

2023年・第76回カンヌ国際映画祭監督週間に選出されたロードムービー。横行する過激主義者たちを、修学旅行でアメリカ東海岸を旅する少女の視点から描き出す。サフディ兄弟監督作「神さまなんかくそくらえ」「グッド・タイム」や福永壮志監督作「アイヌモシリ」などで撮影を担当したショーン・プライス・ウィリアムズが本作で監督デビュー、16mmフィルムで撮影した。主人公のリリアンを「17歳の瞳に映る世界」のタリア・ライダーが演じるほか、「レッド・ロケット」のサイモン・レックス、「プリシラ」のジェイコブ・エロルディらが出演。2023年末の特集『カンヌ監督週間 in Tokio』では「スイート・イースト」のタイトルで2回上映され、好評を博した。
  • 映画評論家

    鬼塚大輔

    さまざまな怪しい団体やカルトがうごめく“不思議の国”アメリカを、したたかにノンシャランと突っ切っていくヒロインの姿をざらりとしたタッチで描く映像が実に魅力的。ヒロインとロリコン教授の関係は、アリス・リデルとルイス・キャロルの関係が下敷きだよねとか、ポー、グリフィス、そしてモリコーネまで登場とか、実に賑やかで楽しい。製作総指揮がティール財団(ググってください)の元専務理事だと知ってしまうと作品の見方ががらりと変わり、ラストがさらに怖くなる。

  • ライター、翻訳家

    野中モモ

    ヒロインの首を彩るタトゥーチョーカーとスケーター風のスタイリングに「時代設定は90年代?」と思ったらスマートフォンが出てきた(そしてすぐに使えなくなった)。刹那的に状況に流され続けてしまうのも、構ってくる男がことごとくクズなのも、たぶん誇張と戯画化を施した今のアメリカの現実で。先日グレッグ・アラキ監督「ドゥーム・ジェネレーション」のリバイバル上映を観て、こういうデタラメかつ切実な冒険ものが今の世の中には不足している! と思っていたところにグッドタイミングの公開。

  • SF・文芸評論家

    藤田直哉

    ノスタルジックな少女趣味の画調と衣裳でヒロインの魅力を写しながら、アメリカン・ニューシネマを思わせる撮影方法や編集と旅で、現代アメリカのさまざまな政治的問題や集団を次々に見せる、野心的な作品。懐古的な画面と衣裳と女性の美の描き方なのに、オルタナ右翼の陰謀論・ピザゲート事件を思わせる事件から物語が転がり出す。ジャンルや時代を錯誤した独自のハイブリッドなスタイル自体が、過去志向と未来志向の混濁する現代アメリカに即した批評性を発揮し見事。

  • 映画評論家

    鬼塚大輔

    さまざまな怪しい団体やカルトがうごめく“不思議の国”アメリカを、したたかにノンシャランと突っ切っていくヒロインの姿をざらりとしたタッチで描く映像が実に魅力的。ヒロインとロリコン教授の関係は、アリス・リデルとルイス・キャロルの関係が下敷きだよねとか、ポー、グリフィス、そしてモリコーネまで登場とか、実に賑やかで楽しい。製作総指揮がティール財団(ググってください)の元専務理事だと知ってしまうと作品の見方ががらりと変わり、ラストがさらに怖くなる。

  • ライター、翻訳家

    野中モモ

    ヒロインの首を彩るタトゥーチョーカーとスケーター風のスタイリングに「時代設定は90年代?」と思ったらスマートフォンが出てきた(そしてすぐに使えなくなった)。刹那的に状況に流され続けてしまうのも、構ってくる男がことごとくクズなのも、たぶん誇張と戯画化を施した今のアメリカの現実で。先日グレッグ・アラキ監督「ドゥーム・ジェネレーション」のリバイバル上映を観て、こういうデタラメかつ切実な冒険ものが今の世の中には不足している! と思っていたところにグッドタイミングの公開。

  • SF・文芸評論家

    藤田直哉

    ノスタルジックな少女趣味の画調と衣裳でヒロインの魅力を写しながら、アメリカン・ニューシネマを思わせる撮影方法や編集と旅で、現代アメリカのさまざまな政治的問題や集団を次々に見せる、野心的な作品。懐古的な画面と衣裳と女性の美の描き方なのに、オルタナ右翼の陰謀論・ピザゲート事件を思わせる事件から物語が転がり出す。ジャンルや時代を錯誤した独自のハイブリッドなスタイル自体が、過去志向と未来志向の混濁する現代アメリカに即した批評性を発揮し見事。

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