ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻の映画専門家レビュー一覧
ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻
暴君ヘンリー8世と、その6番目にして最後の妻キャサリンの壮絶な運命を描く宮廷スリラー。16世紀の英国、テューダー朝。容赦なく王妃を切り捨てるヘンリー8世と望まぬ結婚をしたキャサリンは、あらゆる政治的陰謀が絡み合う宮廷で、異端の証拠探しに巻き込まれる。出演は「リリーのすべて」のアリシア・ヴィキャンデル、「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」のジュード・ロウ、「マレフィセント」のサム・ライリー。監督は「もしも建物が話せたら」のカリン・アイヌーズ。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。
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文筆業
奈々村久生
史実との符合はともかく「宮廷サバイバルスリラー」として楽しんだ。ヴィキャンデルも一目ではわからなかったぐらいコスチューム・プレイを乗りこなしていたが、肥大した暴君ヘンリー8世を演じたジュード・ロウの変貌ぶりには新鮮に衝撃を受けた。夫婦でありながら敵対する二人だがどこか共犯者のようにも見える。野心と陰謀うずまく視線のドラマやシスターフッド的な要素も悪くない。諸事情でモノクロのバージョンを鑑賞したのだが、過激な描写や情報量が中和されたソリッドな味わいもよかった。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
「王」というものは長いあいだ玉座についていると狂い、誰かをむかつかせるようになり、ちっぽけな王であっても(いつテレビをつけてもその人が映ってて周囲を支配している偉そうな者も王だ)かならず殺されるか引きずり降ろされる末路をたどる。現代でも銃撃されて本当に処刑される王もいるし、王を袋叩きにするのは民衆を興奮させる娯楽だ。これは王殺し=夫殺しの現代的な映画。ほとんどの場合、女は同レベルの男より優秀だが、女も男も王になるなら悲しみを知ってる者がなるべきなのだ。
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映画評論家
真魚八重子
イギリス国王で、妻を次々と迫害追放してきた暴君ヘンリー8世と、6番目の妻となったキャサリン。イングランド国教会を設立したヘンリーに対し、キャサリンはプロテスタントとして信仰が厚く、布教を考えていた。ヘンリーのでっぷりした見た目は、女性を力で圧倒する残酷な恐ろしさを体現し、対するキャサリンは冷ややかな美貌でヘンリーを懐柔し、信仰で裏切る知性を放つ。豪奢な衣裳と主演二人の艶のある演技に魅了される。ヘンリーの壊疽がサスペンスの鍵となる設定も面白い。
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