ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男の映画専門家レビュー一覧

ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男

ヒトラーの腹心で宣伝大臣としてプロパガンダを主導し国民を煽動、“フェイクニュースの祖”とされるゲッベルスの活動を、アーカイブ映像やホロコースト生存者へのインタビュー、再現ドラマを交えて描く。ゲッベルスの軌跡を辿ると共に、世間のイメージを形作ったプロパガンダの手法に迫る。監督は、ドイツでTV映画などを手がけてきたヨアヒム・A・ラング。「パリよ、永遠に」のロベルト・シュタットローバー、「モニタリング」のフリッツ・カールらが出演。2024年ミュンヘン映画祭観客賞受賞。
  • 映画評論家

    鬼塚大輔

    具体的に見せない、を徹底することで、ナチスの悪(だけではないが)を鮮烈に表現した「関心領域」とは対照的に、ドラマ、記録映像、プロパガンダ映画の一部、説明的字幕、などをこれでもかと駆使して独裁、それを支えるプロパガンダの恐ろしさを訴える。そのプロパガンダに嬉々として乗っかっていく民衆の姿の方こそ、今は描くべきだと思えてしまうし、ドラマ部分の安っぽさが目立つものの、それでもネット時代の今だからこそ、観ておくべき作品なのは間違いない。

  • ライター、翻訳家

    野中モモ

    俳優がゲッベルスやヒトラーを演じるドラマとナチス・ドイツの時代に実際に撮影された映像を組み合わせて世論を操作するプロパガンダの舞台裏を描くのだが、とにかく後者が強烈すぎる。「ショッキングな場面も含まれております」と警告されていてもやはりしんどい。マイノリティを「他者」と定めて悪魔化し排除しようとする残虐な動きは今日のドイツでもアメリカでもパレスチナでも日本でも現在進行形だから自分も含め人類が愚かで吐きそう。生きていてごめんなさいという気持ちに。

  • SF・文芸評論家

    藤田直哉

    ナチスドイツの宣伝を担当した男を、史実や資料に基づいて再現。メディア統制や映画やラジオを用い、現実を歪め認識できなくさせたことが、いかにドイツを破滅に導いたかを描く。極悪人ではなく、卑小ですらある人間として彼らを描くことで、現在起きている類似の事象との繋がりを生々しく感じさせることに成功している。フェイクニュース・デマによるファシズム的な現状に対する批判意識は極めて明瞭。惜しいのは、映画全体を貫くドラマ的な醍醐味が薄いこと。

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