アンジーのBARで逢いましょうの映画専門家レビュー一覧
アンジーのBARで逢いましょう
「九十歳。何がめでたい」で91歳にして第37回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞の主演女優賞を受賞した草笛光子が主演したファンタジックなドラマ。風に吹かれてやってきた白髪の女性アンジーは、いわくつきの物件を借りてBARを開き、出会った人の人生をそっと変えていく。監督は「星に語りて-Starry Sky-」の松本動。「うなぎ」や「十三人の刺客」などの脚本を手がけた天願大介が脚本を担当。謎多きヒロイン・アンジーを草笛光子が、アンジーに物件を貸す熊坂を寺尾聰が、謎の青年をディーン・フジオカが演じる。
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評論家
上野昻志
企画からそうなのだろうが、草笛光子あっての映画。彼女演じるアンジーと名乗る、訳ありの流れ者が行き着いた町で、放置された家屋を借りて、バーにしていく。手伝うのは、ホームレスの大工や職人に、物言わぬ舞踏家。そこに関わる連中で、まともなのは、向かいの美容院の女性経営者ぐらいで、あとは一癖も二癖もある住人。ただ、それらが賑やかしに留まっているのが、残念。バーが完成、その開店祝いで一騒動が起こり、アンジーはまた旅に出る。草笛光子の存在感で★一つプラス。
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リモートワーカー型物書き
キシオカタカシ
現代のおとぎ話のような優しく心に染み入る温かい人情噺なのだが、「ある日ぶらりと流れ者が町にやって来て……」という構造は完全に西部劇のそれ。本作は言うなれば“草笛光子版「ペイルライダー」”である。ただしある意味で天上の存在と化していたイーストウッドの“牧師”に対して、本作の主人公アンジーは超然としながらもその確かな実存を伝える生の躍動感を備える。もはや本人を“ひとつの映画ジャンル”として成立させてしまう草笛光子のオーラに、改めてそのスター性を見た!
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翻訳者、映画批評
篠儀直子
流れ者が街にやって来た、的な西部劇みたいなオープニングから、小津みたいな煙突の立ち並ぶ風景へという導入にわくわく。青木柚をめぐるエピソードの描き方が瑞々しくてよいのだが、手垢のついた表現になっているところとの落差が激しくて、どうしたものかと思う。でも、草笛光子の魅力がこれだけ炸裂していたら悪く言う気にはなれない。彼女が経営するバーに行きたくない人などいるだろうか、早く開店してほしいと思いながら観ていたから、その点では肩透かしだったが、まあこれはこれでよいかと。
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