少年(2024)の映画専門家レビュー一覧

少年(2024)

CMディレクターとして活動し、1985年にシナリオ『助監督』で第11回城戸賞に入賞を果たした旦雄二が監督した青春ドラマ。1999年国旗国歌法強行採決抗議デモの実景ショットからクランクインし、25年の時を経て追加シーンを加えて完成させた。どこにも居場所がない高校生ジュンは、国旗国歌法成立直後の卒業式でたまたま起立斉唱しなかったことが政治行動と決めつけられる……。2001年にモデルとしてデビュー、本作のクランクイン後に「ロストパラダイス・イン・トーキョー」に出演、「水平線」では長編監督に挑んだ小林且弥が孤独な少年ジュンを演じた。他の共演者はドラマ『GTO』の中村愛美、「プラトニック・セックス」の留奥麻依子。
  • 評論家

    上野昻志

    「君が代」の大合唱が響く高校の卒業式で、唯一人、椅子に座ったまま歌わなかったために、式後、教師に殴られた少年の物語だが、両親との関係や、街で出会った少女との一筋縄でいかない関係、引きこもりの友人などが、時間の推移と共に変化し、少年を追い詰めていく過程がリアルに語られていくのに惹き込まれた。先輩に誘われて行った愛国団体の会長を、鈴木清順師が演じているのも嬉しかった。居場所をなくした少年と少女のその後を描いた最後まで緊張が途切れることがない。

  • リモートワーカー型物書き

    キシオカタカシ

    自分は1983年早生まれなので、本作の“少年”とまさに同じ世代。我々が“大人”から現代への絶望と未来への希望を双肩に託される“若者”だった時代もあったのだよな……と、当事者として感傷的になってしまった。長尺に90年代末?Y2Kの社会問題全部盛り。符合する部分が多い同時代撮影作「リリィ・シュシュのすべて」「凶気の桜」と比べたら奇を衒わない、悪く言えば2時間ドラマ的な直球表現により、今に連なる宿痾を宿す当時の空気を封じ込めた“タイムカプセル”として機能している。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    大島?の同名作品と直接関係はないが、似ているところもあるのかも。ほとんどの人が少年少女時代に経験するだろう、世界への普遍的な違和感が、後戻り不可能な負のスパイラルへとつながっていく。長身すぎる主人公が、自分の身体を家屋やフレームに収めるのに難渋して見えること自体が、彼の受難を表現しているかのようだ。メインの撮影は2000年前後。いまよりいい時代だったか悪い時代だったかはともかく、当時の日本社会の独特の閉塞感が、そのままパッケージされたかのように見えるのも興味深い。

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