人生の約束の映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
新湊の風景が美しい。そこで演じられる新湊曳山まつりの光景が、ダイナミックだ。ただ、わたしが一番、感心したのは、新人・高橋ひかるの眼差しの強さだ。亡き父親に対しても、その親友という主人公(竹野内豊)に対しても、たやすく心を許さない構えが、その眼差しに現れていた。これは、むろん、彼女を選び、演出した監督の力量にもよるだろう。ただ、彼女と亡父の関係とりわけ時間的な経過がよくわからない。父親は、結婚も娘が生まれたことも隠して主人公と共に働いていたのか?
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
いきなり脱線する。七〇年代の実録やくざ映画には地方のやくざが関西や関東に本拠を置く大組織に対抗する話が多く、方言によるセリフや地方の風物が映画を活気づけ、中央集権化への抗いと愛郷心が強く表現された。そこには案外現在の世界を覆うグローバリゼーションへのアンチにもなることが予見されていたような気もするが、本作にもそれを感じた。最近の邦画に多い、地方をフィーチャーする企画ながら、実は表面を食い荒らすようなものとは違う、重厚なこだわりが本作にはある。
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文筆業
八幡橙
『池中玄太』世代としては石橋冠監督、満を持しての映画デビュー作という点に大きな興味が。が、「自分が発想した物語を、自分が愛する風景の中で撮らなければ」との監督の思いが深すぎたのか、個人的には最後まで同じ熱量で物語に乗り、入り込んでゆくことが難しかった。竹野内豊演じるIT社長と、今は亡きかつての親友との関係がしっかりとは描かれぬまま、ひたすら祭りの「曳山」を巡る町と町との対立の物語へ。親友の娘と主人公の変に艶っぽい関係や祭りシーンのくどさにも疑問が。
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