スキャナー 記憶のカケラをよむ男の映画専門家レビュー一覧

スキャナー 記憶のカケラをよむ男

狂言師・野村萬斎が初めて現代劇に挑んだ異色ミステリー。物体や場所に残った記憶や思い=残留思念を読み取れる特殊能力を持つ元お笑い芸人の男が、かつてコンビを組んでいた元相方と共に失踪したピアノ教師を探すうちに、思わぬ事件に突き当たる。監督は「デスノート」シリーズの金子修介。脚本を「探偵はBARにいる」シリーズの古沢良太が手がけた。野村萬斎が手をかざし残留思念を読み取る元芸人に扮するほか、お笑いコンビ『雨上がり決死隊』の宮迫博之が彼の元相方を、二人に捜査を依頼する女子高生を「トイレのピエタ」の杉咲花が演じる。
  • 評論家

    上野昻志

    手で触れて、そこに残された思念を読み取って推理するというのは、ミステリーの新手と言うべきか。まあ、映画は小説と違って、物証による推理で見せるものじゃないから、これでOKなのでしょう。ただ、野村萬斎扮するスキャナー探偵を、失踪したピアノ教師捜しに引っ張り出すまでの導入部が、くだくだしくて長い。もっと歯切れ良くいかんものかね。話は捻ってあるから最後まで見せるが、養子というのが、何故か一人ならず出てくるのには、作者に格別な思いがあるからなのか?

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    物体に秘められた残留思念を読み取る超能力、サイコメトリーを描いた場面がある映画といえばリチャード・フライシャー監督作「絞殺魔」。これは六十年代に米国で起きた、俗にいう“ボストン絞殺魔事件”を題材にしているが、この事件の捜査にピーター・フルコスなるサイコメトラーが協力したという史実もあった。映画「絞殺魔」のフルコスは奇人ふうであり、能力発揮のため手がかりを揉みしだく。「のぼうの城」ではウザかった野村萬斎の存在感は本作ではその線でいい感じを醸す。

  • 文筆業

    八幡橙

    元お笑いコンビによる“スキャナー芸”。野村萬斎と宮迫博之、二人が演じる対照的なキャラを軽妙な語り口で際立たせてゆく、「探偵はBARにいる」に通じる導入は心踊る。ピアノ教師の失踪事件を残留思念からいかに読み解いてゆくのか、興味を掻き立てられた。が、真実に近づくにつれ、次第に興が醒めていってしまった。病弱な少女と元気に遊ぶ子供たち、という昭和を思わせる設定も、真犯人の心情も、オリジナル脚本ならではの時代性に乏しく。唯一期待通りの萬斎節は堪能できたが。

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