Maiko ふたたびの白鳥の映画専門家レビュー一覧

Maiko ふたたびの白鳥

ノルウェー国立バレエ団プリンシパルの西野麻衣子に密着したドキュメンタリー。トップダンサーとして最も充実した時期に子供が欲しい気持ちとキャリアの間で葛藤する中、予期せず妊娠。出産後、再び『白鳥の湖』の主役に挑戦する姿を追う。監督は、本作が長編デビューとなるオセ・スベンハイム・ドリブネス。
  • 映画監督、映画評論

    筒井武文

    これは誰に向けて撮っているのだろう。バレリーナの芸術性を描いているとは思えないし、バレエ団の内幕ものでもないし。ノルウェーで、東洋初のプリンシパルになった西野麻衣子とその浪速の肝っ玉母さんとの愛情物語なのだろうか。そのお母さんに捧げる映画であれば納得できなくもない。後半の出産、それを経て舞台復帰できるかというサスペンスが軸になるのだが、それであれば冒頭あたりで、演目の『白鳥の湖』の舞台袖からの映像は見せない方がよかったのではないかしら。

  • 映画監督

    内藤誠

    ノルウェーで活躍するバレリーナ麻衣子は大阪出身の「ど根性」女子を絵にかいたようなキャラクター。笠置シヅ子に雰囲気の似た母親も愛嬌たっぷりで笑わせる。十五歳でロイヤルバレエスクールに留学して、いろいろ苦労はあったのだろうが、ハッピーエンドに向かって一直線のドキュメンタリーだ。オスロの風景もヒロインの住まいも清潔で美しく、周辺にも悪意のある人間は一人も登場せず、彼女が出産して舞台に復帰することを祝福。日本の「マタハラ」ということばが恥ずかしくなる。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    体型の変化が見た目にもキャリアにもダイレクトに反映されるバレリーナという職業だからこそ、その妊娠と出産、産後の復帰にフィーチャーした視点が生きる。膨らんだお腹でレッスンに臨む麻衣子の姿はその画だけで何重もの意味を持つ。何カ月まで踊れるのか? そこまでして踊る理由は? 母体と子供の安全を考えても踊るべきなのか? などなど。惜しむらくは、問題提起は豊富なのに、それに対する劇中での見解が曖昧なこと。母としての復帰が意味するものを掘り下げて欲しかった。

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