破門 ふたりのヤクビョーガミの映画専門家レビュー一覧

破門 ふたりのヤクビョーガミ

第151回直木賞受賞作の黒川博行『破門』を「超高速!参勤交代」の佐々木蔵之介と関ジャニ∞・横山裕のW主演で映画化。やくざの桑原がいる二蝶会は、建設コンサルタント・二宮の紹介で映画に出資する。しかしプロデューサーの小清水は金を持って姿を消す。監督は、「毎日かあさん」の小林聖太郎。
  • 評論家

    上野昻志

    そうか、佐々木蔵之介が、小藩の心優しい殿様じゃなく、やくざをやるか、と思ったが、これが見事にはまっていた。とくに、目玉?きだしにして、殴りかかるところなど、思わず吹き出した。いや、アクションの捌きもなかなか。対するカタギの横山裕も、へたれの感じをよく出していたし、キムラ緑子の母親と向き合う場面など、いかにも普通という雰囲気でいい(キムラのうまさもあるが)。で、全篇、追っかけに次ぐ追っかけはスピード感があり、捕まっては逃げる橋爪功のしぶとさも効いている。

  • 映画評論家

    上島春彦

    北村一輝に比べると佐々木蔵之介はいかにもインテリやくざっぽくて、これはこれで面白い。彼に引っぱりまわされる横山君は部下でも子分でもないのは当然だが、本人的には相棒ですらない。それが人間関係の機微を生むものの、脚本家が期待するほどにはクライマックスの逡巡が効いていない。それとやくざがあまりに簡単に騙されてしまって不自然。仕掛けは実は複雑なのだが作劇的にうまくいってないようだ。また橋爪が映画人だか詐欺師だか分からないのも、私としては納得しかねる感じ。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    実家の台所で横山が母のキムラ緑子と食卓を囲んで話す何でもないシーンが素晴らしい。多用される『ほなね』など大阪弁の柔らかな語感を大事にする小林聖太郎はデビュー作「かぞくのひけつ」のようなドライでペーソスのある喜劇が向いている。荒っぽい題材ではヤンチャさが不足。横山は佐々木がどんどん突っ込んでくるのを受け止めきれず、TV版の濱田岳が巧みな受けを見せるだけに、つい比べてしまう。壁に貼られたVシネマのポスターに映る急逝した芸人テントの姿に万感の思い。

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