海賊とよばれた男の映画専門家レビュー一覧
海賊とよばれた男
百田尚樹の同名ベストセラー小説を「永遠の0」のコンビ、山崎貴監督・岡田准一主演で映画化。敗戦後、石油販売を行う国岡商店を率いてきた鐡造は、日本人としての誇りを持ちながら、独自の哲学と行動力で戦後日本に勇気と希望を与える大事業を成し遂げてゆく。共演は「64 ロクヨン」の吉岡秀隆、「ストレイヤーズ・クロニクル」の染谷将太、「海街diary」の綾瀬はるか、「愛を語れば変態ですか」の野間口徹、「俺物語!!」の鈴木亮平、「日本で一番悪い奴ら」のピエール瀧、「お盆の弟」の光石研、「日本のいちばん長い日(2015)」の堤真一、「映画 深夜食堂」の小林薫。音楽は「永遠の0」の佐藤直紀。
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映画評論家
北川れい子
山っ気が多い勝負師のような商売人の成功譚といったら身もフタもないか。確かに主人公が戦後日本の復興に果たした役割は大きいのだろうが、映画の主人公として付き合うには観ているこちらの心に触れるものがほとんどなく、岡田准一の演技も人間的なスケール感不足。それに商売人が商売のためにあれこれ仕掛けるのは当然のことだし。美術やロケ地など、時代の再現は頑張っているようだが、主人公のイケイケ的な行動を追うだけではない描写もほしかった。体育会系好きにはいいかも。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
岡田准一、すごい。本作は彼の主演作でしばしば生じる、短躯であることの逆説的な優位が最も発揮された作品。立派すぎる体格の登場人物を岡田が見上げる姿勢をとりながら態度は上から目線で叱責するとき、ますます主人公のカリスマ性は強調され、またそれは旧世代日本人の体格時代考証に合っていない役者が非難されているようにも見える。ただ、直接批判がタブーで責任不問の存在である主人公の人物像はクソ。結果、天皇制や日本人の心性への批判を忍ばせていてそこは良い、かな。
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映画評論家
松崎健夫
この映画の岡田准一は凄い。何が凄いのかと言うと、劇中で基本的に“年老いている”からである。つまり、実年齢よりも年上の役であるだけでなく、殆どの場面で何らかの特殊メイクを施し“年老いている”のだ。例えるなら、宇宙人やモンスターの類いを演じるため特殊メイクを施す、あるいはジョニー・デップが海賊やハサミ男を演じるため素顔を隠すことに限りなく近い。彼は果敢に“老い”を演じているが、観客がそのことを望んでいるか否か?なんてことはお構いなし。役者の鑑である。
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