君の名は。の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
別々の時空間で、ずっと誰かを何かを探している高校生の男子と女子。2人は出合うことなく相手と出合い、出合わないのに相手の存在に気がつく。何やらヤヤコシい言い回しになってしまったが、思春期特有の“なりたい願望”をベースにした本作は、宇宙の神秘まで取り込んでリアルに着地する。とはいえ途中、こちらの飲み込み方がワルかったのか、未消化なところも。が、繊細で美しい絵と、2人のキャラクターを観ていると、それだけで心地よくなり、新海アニメに流れる時間は格別だ。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
良い。「アベンジャーズ」「マン・オブ・スティール」等を観るとアメリカ人がほんとに9・11に傷ついたんだと思う。破壊の残像を、懸命に正義への戦いと最終勝利へと意味づけようとしていた。本作や「シン・ゴジラ」は日本人の3・11体験にとってのそれだ。皆があれに対して、戦い、人を救いたかったのだ。やっとそれを「お話」にできた。かつてカイル・リースはサラ・コナーに言った。「あなたを守るために、時を越えてやってきたんだ」と。本作からその声が聞こえた。
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映画評論家
松崎健夫
中学の頃、親友が〈黄昏〉の由来について話していた。〈たそがれ〉は、元々〈たそ、かれ〉で、〈誰、彼〉なのだ、と。薄暮であるから相手の顔がよく見えない。そこで「あなたは誰?」と相手に訊ねるのだ。このことは「君の名は。」というタイトルと共鳴している。そして「あなたは誰?」が示す意味を変化させながら、全篇にわたる伏線ともなっている。さらに、現代に生きる我々の現実と地続きの世界を描くことで、現実にはあり得ない“希望”を描くことの意味をも考えさせるのである。
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