ちょきの映画専門家レビュー一覧

ちょき

「ゆるせない、逢いたい」の金井純一監督によるオリジナル作品。和歌山市の商店街で美容室を営む直人のもとに、亡くなった妻が開いていた書道教室の生徒であったサキが現れる。10年前に起きた事件以来、サキと会っていなかった直人は、彼女が全盲だと知り……。出演は「わたしたちがうたうとき」の増田璃子、「アイアムアヒーロー」の吉沢悠、「ゆずの葉ゆれて」の芳本美代子、「岸辺の旅」の小松政夫、「向日葵の丘 1983年・夏」の藤井武美。音楽を「女の子ものがたり」のおおはた雄一が担当。2016年11月19日より和歌山先行公開。
  • 評論家

    上野昻志

    最近の日本映画では珍しく、実にシンプルな物語を、シンプルな動きの反復において描き出した点において、一頭地を抜いている。それは吉沢悠演じる美容師の、朝起きてコーヒーを沸かし、ポットに入れて店に行き、鏡を磨き客の髪を洗うという日常の繰り返しから、増田璃子扮する盲目の少女が外に出る際には誰かの介助を得て歩くという単純な反復へと連動し、映画のリズムを作る。彼女と藤井武美の弱視の少女との関係や、母親との関係も、くだくだしい説明抜きに描いているのがいい。

  • 映画評論家

    上島春彦

    一見地味だが画面と編集の的確さがまず見事。冒頭部、レコードがゆっくりと止まってしまうあたりの繊細な描写を見てほしい。こういうのが映画なのだとつくづく実感する私。妻を亡くした理髪店主「ちょき」さんと、親のDVで失明した美少女の交流、という物語の現在に様々な過去の挿話を織り込みながらさらりと描いていく監督の手腕に舌を巻く。二つの時間が一つの画面に合わさる神社の場面もスリリングである。少女に恋されているとなかなか気づかない理髪店主の純情ぶりもいい。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    美容室のオヤジと盲目女子高生の禁断愛を描いたご当地映画。主人公はのほほんとし過ぎていて周囲から関係を疑われても「そんなことない」の一点張りで全て説明がつくと思っている。ロケ地を魅力的に映す必要があるため、間違っても駆け落ちなんぞ出来ないので、いい話として終始するのが不満。性を直接描けとは言わないが、示唆する描写は可能なはず。性にも淡白で葛藤も対立も回避しては口当たりのいい綺麗な風景と町並みしか印象に残らないが、製作意図からすればそれでいいのか。

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