彼らが本気で編むときは、の映画専門家レビュー一覧

彼らが本気で編むときは、

「めがね」の荻上直子監督が5年ぶりに撮り上げた人間ドラマ。母親に育児放棄された11歳のトモは叔父マキオを訪ね、トランスジェンダーのリンコと出会う。母よりも自分に愛情を注いでくれるリンコの存在に戸惑いながらも、三人での奇妙な共同生活が始まった。出演は「秘密 THE TOP SECRET」の生田斗真、「GONIN サーガ」の桐谷健太、本作が映画デビューとなる柿原りんか、「カノン」のミムラ、「人生の約束」の小池栄子、「二重生活」の門脇麦。
  • 映画評論家

    北川れい子

    カラフルな毛糸で編まれた“煩悩”の山に思わず笑ってしまったが、美術か小道具の人か、これを編んだスタッフたちを労いたい。痛いエピソードではなく、こういう形でトランスジェンダーのリンコの思いを描くとは、荻上監督、余裕がある。一方で、そんなリンコに母親に置き去りにされた少女を寄り添わせるアザトさが気になったが、2人をつなぐ桐谷健太に気負いがなく、疑似家族ドラマの佳作として気持ちがいい。主人公たちの生活の基盤である仕事を丁寧に描いているのも評価したい。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    『映画芸術』458号の荒戸源次郎追悼の談話を読んで生田斗真という俳優を見直した矢先のこの映画。ますます見直す。ジャニーズ俳優で言うと私は短?ながらマッチョな役柄をやりきる岡田准一の和製トム・クルーズ性が嫌いではないが、それと完全に立ち位置・ベクトルを別にしたメタモルフォーゼ系の役柄チョイスをする生田も非常に興味深い。「土竜の唄」二作のヤクザ&警察世界において華奢な彼がこの映画ではごつ過ぎる悲哀を出す。面白い。あとは能町みね子氏の感想を待つ。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    〈血縁に依らない人間関係〉を描く作品が〈血縁よりも濃い絆〉を提示するにつけ、どんどん利己的になってゆく現代社会において「自分のためだけでなく、誰かのために生きるという選択肢もあるのではないか?」と考えさせられる。本作は、これまでの荻上直子監督作品とは表層的に異なっているように見えるのだが、実は“周囲に馴染めない主人公”という共通点がある。そして〈食べる〉という行為も、荻上作品で描かれてきた共通点。〈食べる〉ことは、即ち〈生きる〉ことなのである。

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