ラプチャー 破裂の映画専門家レビュー一覧
ラプチャー 破裂
「プロメテウス」のノオミ・ラパス主演による異色ホラー。蜘蛛が嫌いなシングルマザーのレネーは、ある日、見知らぬ男たちに拉致され、謎の隔離施設に監禁される。そこでは、被験者にいちばん嫌いなものを与え続けるという拷問のような人体実験が行われていた。共演は「誰のせいでもない」のピーター・ストーメア、「PARKER パーカー」のマイケル・チクリス、「家族の庭」のレスリー・マンヴィル、「グランドピアノ 狙われた黒鍵」のケリー・ビシェ。監督・原案・製作は「セクレタリー」のスティーヴン・シャインバーグ。脚本・原案は「デビル(2010)」のブライアン・ネルソン。
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翻訳家
篠儀直子
拉致のシーンだけでも「なぜ後ろからいきなりスタンガンを使わないのか」等々、いっぺんに五カ所ぐらいツッコみたくなって、とんだぼんくら映画かと思いきや、監禁先の設備や、科学者風の一味の服装や外見の、奇妙なレトロ感を見るに至り、50年代から60年代にかけてのB級SF映画の感じを狙った作品ではと思い当たる。当時のその種の映画には冷戦期のパラノイアが表現されていたとも言われるが、そこまで念頭に置いてその現代性を主張した作品、かどうかは訊いてみないとわからない。
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映画監督
内藤誠
写真家ダイアン・アーバスの映画を撮ったシャインバーグ監督の作品だけに低予算のSFホラーながらディテールがいい。一人息子を育てるシングルマザーのノオミ・ラパスの変身してゆく姿の描き方がみごと。彼女が囚われて、恐怖の実験が繰り返される建物が予算の無さむき出しの安いセットなのも妙にリアル。その中で実験に従事する者たちもなぜか女性が怖い。とりわけレスリー・マンヴィルの上品な老女の優しい顔が一番の恐怖。映画好きが集まって、知恵を出し合った作品だとはおもう。
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ライター
平田裕介
S・シャインバーグ監督の前々作「セクレタリー」が、SMとラブロマンスを巧みに融合させた作品だったので期待大。今回もボンデージ要素濃厚であるものの、蜘蛛責めをはじめとする猟奇プレイの描写はさほどなく、主人公と彼女を捕えた連中の正体をめぐるミステリーに重きを置いた仕上がりに。しかし、これがなんとも緊迫感不足というか投げやり感満点でのめり込めず。だが、それが「結局、コイツらはなんなんだ?」という良い意味でのモヤモヤ感を残すことになるので悪くはないのだが。
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