グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状の映画専門家レビュー一覧
グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状
ヨーロッパ三大美術館の一つであり、創立120年を迎えたウィーン美術史美術館改装の舞台裏を映し出すドキュメンタリー。名門一族の美術品を継承する美術館再オープンに向け、館長から清掃員に至るまで様々なスタッフが美術品を最高の形で展示する過程に密着する。監督は「鏡の中のマヤ・デレン」でプロデューサーを務めたヨハネス・ホルツハウゼン。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
ワイズマンは英ナショナル・ギャラリーやパリ・オペラ座、コメディ・フランセーズを出来事の生起する場として酷薄に記録し、負けじとソクーロフはエルミタージュとルーヴルの空間をおのがじし芸術観、歴史観にまで敷衍させた。一方「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」は改修工事トラブルを風刺喜劇に仕立てた。翻って本作でウィーン美術史美術館スタッフが「当館も世界の施設と比べられる」と危機感を述べているが、映画も同様。お行儀が良すぎるのでは。もっと美の放蕩を!
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脚本家
北里宇一郎
最近、上映の機会が増えた美術館記録映画。今回はウイーン美術史美術館。所蔵の美術品も膨大なら建物も巨大。その中を血液みたいに人間たちが蠢く。ハプスブルク家の遺産を生かしているのは、このスタッフたちだというように。その一人一人のスケッチがさりげない。だけど監督が、その人たちを抱きしめるように撮って。清掃、修復、会議、展示などが次から次へと綴られ、はっきり申せば地味な展開。が、このスタッフたちが作品を手に取り、ふれる、その眼差しに、深い美術愛を感じて。
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映画ライター
中西愛子
ハプスブルク家の遺産を受け継ぐウィーン美術史美術館。その大規模な改装工事に密着し、知られざる舞台裏をとらえたドキュメンタリー。伝統と格式の色がかなり強い美術館で、一方で、グローバル化の波も意識せざるを得ない再オープンまでの関係者たちの葛藤が興味をそそる。館内の人たちの役割も含め、明確なヒエラルキーが窺える美術館案内は、私は少し息苦しかったけど、完成した展示の様子はさすがに圧巻。改装中に見学に来た、大英博物館の館長さんの個性が異彩を放っていた。
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